「まるで別人」坂井瑠星の騎乗に唸った…チェルヴィニアはもう心配なさそう【しらさぎSの回顧】

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「まるで別人」坂井瑠星の騎乗に唸った…チェルヴィニアはもう心配なさそう【しらさぎSの回顧】

ガシマンどこ行っちゃったの?

阪神11RしらさぎS(G3)芝1600

今年から新設された重賞、第1回しらさぎS(G3)を制したのは、坂井瑠星が初コンビを組んだ5番人気キープカルム(牡4、栗東・中竹和也厩舎)。C.ルメールの1番人気チェルヴィニアに1馬身差をつける完勝で初重賞勝利を飾った。

3着に14番人気の大穴コレペティトールが入った払戻は3連複15万2740円、3連単51万9650円の大波乱。2番人気に支持された川田将雅のレーベンスティールは7着に凡走した。ちなみに3着のコレペティトールも勝ったキープカルムと同じく中竹厩舎の管理馬である。「2頭出しは人気薄を狙え」という競馬の格言もあるが、どちらも来たという欲張りセットだった。

キープカルムは昨秋の木更津特別(2勝)でWIN5対象レースに初登場。母ダンスアミーガなんかも現役時代から知っている馬だ。このときは戸崎圭太のミラビリスマジックを選択して2着に負けた悲しい記憶もある。

それに加えて感じたのは、馬場読み不要なダートなら勝てる三浦皇成が、まったく勝てない芝のレースで勝ったことの方がインパクトが強かったこと。つまり、三浦でも芝のレースを勝てるイコール相当強いかもしれないという意地悪な見解である。※大体正しいのだが。

実際、それ以前にもチャックネイトで東京芝の2400mを勝ち、このときも三浦でも勝てるなんてと驚かされた訳だが、その後にキングが乗ったアメリカジョッキークラブC(G2)で重賞勝ち。そして今回もキープカルムのG3勝ちへと繋がった。

他にもヤマニンサルバムみたいなケースもあれば、ウインカーネリアンみたいのもある。

こういうのに関しては、「下手糞でも逃げ馬なら何とかなる」典型的なパターンだったと思う。

で、またキープカルムの話に戻る訳だが、改めてレース映像を見直してみると、ガシマンこと坂井瑠星君が、なかなかどうして凄い騎乗を披露していたのだ。

言葉で説明するより百聞は一見に如かず、まずはこちらをご覧いただきたい。

しらさぎSの全パト

実況にもあるようにスタートでは先頭を伺うほど好発を決めている。

しかし、そこからどうしたものか坂井君は賢者モードにでもなったの如く、スルスルと後方まで下げてしまった。

俺の知ってる坂井瑠星じゃない

当方がなぜガシマンという愛らしいあだ名をつけているのかの理由は、ガシガシやってでも逃げ先行に拘って結果を残すタイプの騎手だからだ。それがガシガシマン→略してガシマンの背景。

ところがしらさぎSの坂井はいつものガシマンではなく2枠2番という内の経済コースを通れるメリットを捨ててまで脚を溜める競馬を選択していたのだ。

ラップについては前後半3Fが35秒1-33秒9(後傾1秒2)、4F47秒2-45秒8(後傾1秒4)という超スローの瞬発力勝負。数字の見た目だけなら、フィットするポジション取りではなかったはず。

にもかかわらず、脚の溜まったキープカルムは馬群を縫うように切れ味を見せ、チェルヴィニアが2キロ重い57キロを背負っていたとはいえ、これを0秒5も上回る末脚で差し切ってしまった。これに驚かずして何に驚けばいいのかというもの。

もちろん、大穴を出した井上敏樹君の騎乗も称賛に値するが、個人的には別人のような坂井瑠星に度肝を抜かれることとなった。

何しろ坂井瑠星は「下手糞でも逃げれば何とかなる」を現実に実行して好成績に繋げた騎手。だからこそ、あの好発から下げる発想を持っていたのは正直意外。スローで馬群が固まっていいたため、スムーズな抜け出しとまではいかなかったが、これはもう彼が次のステップに上がったと思うしかない。

逃げ先行より難易度が高くなるのが差し追込みだ。ガシマンが真の意味で一流になるためには、苦手の差し馬を克服する必要がある。でもそれを見事に乗りこなしたのが今回のキープカルムだったという訳だ。

数字がすべてじゃないから、超スローで下げたことがいいのか悪いのかは分からないとはいえ、そこは勝てば官軍。勝ったのだから正解のひとつだったということだろう。なるほど、こんな騎乗はゴ三浦師匠にできっこない。少なくともこのレースの坂井瑠星はガシマンだけが取り柄ではなくなったことを証明したのかもしれない。

チェルヴィニアは復調気配

2着に敗れたチェルヴィニアはピンかパーかの見立てだったが、後ろの馬に交わされて1馬身差なら力負け。G1馬で2キロのハンデはあったが、この内容なら着順が入れ替わるほどではなかったように見える。同じ阪神の芝1600の桜花賞(G1)を13着に惨敗していた馬だが、トラウマ克服には成功した感じだ。

断然人気の京都記念(G2)を1番人気で9着に敗れ、そのときルメールに「ダイエットしましょう」と言われ、ドバイシーマクラシック(G1)もらしくない走りで6着。今回は相手が強かったものの勝ち負けできたなら復調は間近だ。

その一方、昨年の牝馬二冠を取った馬が初重賞勝ちのキープカルムに完敗したことは懸念材料。この世代の牝馬最強は、やっぱりあんなクソ騎乗でもヴィクトリアマイル(G1)を勝ててしまったアスコリピチェーノっぽい気もするね。

いずれにせよ現4歳世代の馬が勝ったことは同じ。この世代はなかなかのハイレベルだ。

★コメント

1着キープカルム 坂井瑠星
「いつもお世話になっている前田オーナーの馬でこの記念すべき第1回のしらさぎSを勝ててとても嬉しく思います。ゲートだけ普通に出られるように気をつけて臨みました。少し狭いところを強引な感じにはなりましたが、馬のおかげで勝つことができました。今日に関しては言うことありません」

2着チェルヴィニア ルメール
「いいレース。ドバイの時より手応えは良かった。ペースが遅く、もう少し速いペースならスタミナが生かせたと思います」

3着コレペティトール 井上敏樹
「ペースがよどんだところでは、ためるよりはと思い、外々を回る形になりましたが、最後まで脚が上がらず、一生懸命走ってくれました。障害練習の効果はあったと思います。今回、実績の無い自分を乗せてくれた馬主さんや関係者の皆さんに感謝しています」

4着ダイシンヤマト 岩田康誠
「位置を取りに行って勝負をかけましたが、伸び切れませんでした」

5着デビットバローズ 松山弘平
「スタート良く、番手で競馬ができました。最後も力強く伸びてくれて、重賞でも勝負になる力を見せてくれました」

10着シヴァース デムーロ
「スタートは良かったですが、かかりました。直線に向いたらジリジリとしか伸びませんでした」