坂井瑠星、ルメール、酒井学の好判断が決め手…堅いレースも荒れたレースも油断は命取り【WIN5結果分析】
先週は2827万6550円の大波乱となったWIN5だが、今週も366万1820円とまずまずの荒れ具合。前半2レースは1番人気、3番人気と比較的堅い決着となったが、3レース目の金鯱賞(G2)、4レース目の米子城S(OP)でそれぞれ穴馬が勝利。ラストのスプリングS(G2)は2番人気ピコチャンブラックが制したものの、全体的に難しい回だったように思う。
当方としては2827万の先週がWIN4で、外れたヴァンヤールも戸崎圭太を侮っての敗戦。それ以外の4つはある程度読めていただけに喪失感も大きかったのだが、今回は堅いと思ったレースが荒れ、荒れると思ったレースが堅い決着と空回り。
これだけ長いこと競馬をやっていると、手応えのなかった戦前から嫌な予感しかしなかった通り、どうやっても当たらない回だった。まあ雨の降る日は馬場が読みにくくなるため、WIN5に限らずなるべく勝負しないようにしているけれど、自信がなくとも初回から参戦している皆勤賞は止めたくない。カッコ悪いのは承知でも敵前逃亡は死刑のポリシーである。
重賞レースは別記事で採り上げるため、まずはそれ以外の3レースについて振り返ってみたい。
阪神10R甲南S(3勝)ダ2000
フルゲート16頭より1頭少ない15頭立てで行われたレースは、坂井瑠星の騎乗したタイトニットが1番人気に応えて鮮やかな差し切り勝ち。前後半1000m通過も63秒7-62秒8と平均ペース。3着に敗れはしたが、それまで後ろからのレースをしていたニューバラードで逃げた鮫島克駿のアイデアはよかった。
本馬は毎回スタートで出遅れているように不器用なタイプ。今回もお約束の様に出が悪かったが、克駿はパートナーを押して押してハナへと誘導。直線半ばで力尽きたものの、人気のホークフィールドを競り落として3着は確保した。SNSで色々言われている騎手だが、この条件で好成績を残しているだけのことはある。
2着ビップスコーピオンも力は出してっての敗戦。普段はもう一列くらい後ろで競馬をする馬ながら、鞍上のミルコも前を意識して直線で6番手まで進出した。勝ちに等しい内容だっただけに、勝ち馬を褒めるしかない。
勝ったタイトニットは見せ場もなく惨敗した前走が嘘のような復活劇。手の合わなかった松山弘平から手綱が戻り、本来の実力が出せたといったところか。
それより驚かされたのは、坂井瑠星のらしからぬ手綱捌きだ。スタートを無難に決めたタイトニットだが、スローで行きたがる馬を内に入れ、1コーナー手前では頭を上げるシーン。そのままインで脚を溜めるのかと思いきや、道中の進路は真ん中よりも外。そのまま外に進路を探すのかと思ったが、直線入り口までスペースを確保できないまま。
通常ならこの時点で万事休すなのだが、慌てずに我慢し続けたのがレベルアップした坂井の冷静なところ。各馬が一斉にスパートしたタイミングで内にVルートが出現。迷わずにインへ誘導して末脚を爆発させている。
坂井瑠星といえば当方がガシマン(注:ガシガシマンの略)という愛らしいニックネームをつけたように、「下手糞ならとにかく前に行け」を実行している有望株。前にいるからこそチャンスが増えている背景とは裏腹に、こんな渋い騎乗をしたのは意外だった。
ガシマンと胸の大きさが強調されるタイトニットはエロいコンビ。さすがだぜ瑠星!やりますねえ。展開がハマったのは間違いないが、時間のある人は全周パトロールを見てみて欲しい。こういうのは持っている人間だね。
3番人気タンゴバイラリンの高杉吏麒は普通に乗って普通に負けた印象。道中の進路取りもガシマンの直後にいたが、内枠を生かせないまま外々を回して4着。前走の北山S(3勝・ダ1800)で10着のライバルに先着する6着だったが、今回は騎手の差が着順に反映された感じだ。
★コメント
1着タイトニット 坂井瑠星
「ゲートも問題なく初めての芝スタートも大丈夫でした。(道中)スムーズではなかった分脚が溜まって、最後は弾けてくれました」2着ビップスコーピオン M.デムーロ
「上手くいきました。完璧だったと思います。相手が強かったです」3着ニューバラード 鮫島克駿
「ズブい馬なのでレース前からしっかりプレッシャーを掛けていきました。早い段階で砂を被らない位置につけたかったので、ハナに立っていきました。理想的な競馬が出来ました」4着ホークフィールド 富田暁
「今日は持ったまま楽に回ってきました。このクラスで通用の目処は出来たと思います」5着タンゴバイラリン 高杉吏麒
「外に出して、この馬の脚は使ってくれました。軽い馬場と、よーいドンの競馬は合わなかった」※高杉君のコメントはまだまだ若さを感じる。
中山10R東風S(L)芝1600
上位5頭までが単勝一桁台のオッズで、6番人気オニャンコポン以降は離れた。その上位人気馬でも3.1倍キープカルム、3.8倍タシットに票が集まり、ちょっとした二強状態となった。
当方の◎アナゴサンが期待通りのハナ。これにタシットとディオスバリエンテがついていき、先団3頭が横並びで競り合う格好。直線に入ってアナゴサンが抜け出しに成功するも、ゴール前の坂で失速し、外から伸びてきたサイルーンが楽に交わして2馬身差の快勝。間にいたジョウショーホープがゴール前でアナゴサンを捉えて2着に浮上した。
前半で前がやりあったこともあり、前後半3Fは35秒0-38秒4(前傾3秒4)、4F46秒8-50秒4(前傾3秒6)のハイペース。この激流の中を最後の最後まで粘ったアナゴサンは十分に力を出し切ったといえる。にしても近走で10着→16着→11着に惨敗しているから、まったく人気にならないと思っていたらなんと4番人気。穴馬を見抜いた気になっていた身としては、競馬ファンの観察眼に恐れ入るばかりである。
突き抜けたサイルーンは、このメンバー相手に少々舐められ過ぎた気もする。中山記念(G2)は相手も強く距離も1ハロン長い。エプソムC(G3)4着の実力を考えれば、ルメールが乗って1番人気にならなかったのは不思議だ。道中で中団後方を走っている姿には後ろ過ぎないかと怪しんだものの、そこは他の騎手と明らかに違う冷静な手綱捌き。終わってみれば仕掛けのタイミングは完璧で、さすルメカスといいたい。
2着ジョウショーホープは、アナゴサンと同じく強敵相手の大敗からメンバーレベル低下で一発を狙えそうな雰囲気。候補に入った1頭だが、鞍上が大野君だから1着はないと考えて見送った。WIN5ではなく馬券なら買いたい馬だった。
2番人気で5着のタシットは、オープン初戦でこれまで戦ってきた相手と異なった。良馬場でもアナゴサンに先着は出来なかったのではないか。現状の力は出していると思う。
1番人気キープカルムは外目の9番手を追走したが、道中は終始外を回る格好。早めに追い出して先行勢との差を詰めたものの、直線半ばで脚が鈍った。騎手のコメント通り、道悪の適性がなかったのは分かるが、ほぼ同じ位置で内と外の違いだったルメールとの差も目立つ。三浦がわちゃわちゃやってるときにルメールは持ったまま。直線だけ外に進路を見つけるスムーズな進路取りだった。
まあルメールと三浦を比べても仕方ない。
★コメント
1着サイルーン ルメール
「馬場が合いました。ずっと良い感じで手ごたえも良かった」3着アナゴサン 杉原誠人
「馬場と枠順を考えて、ハナに行くことを考えていた。最後はバテ合いになりましたが、よくしのいでくれました」4着グレイイングリーン 戸崎圭太
「馬場が悪いのは苦手な馬なので外を回りましたが、頑張っています」5着タシット 横山和生
「馬場じゃないでしょうか。逃げた馬も交わせなかったですから」9着キープカルム 三浦皇成
「軽いフットワークの馬ですし、馬場に尽きます」
阪神11R米子城S(OP)芝1200
浜中俊ロードフォアエースが1番人気で2着。勝ったのは9番人気の伏兵カルチャーデイと酒井学のコンビだった。
芝1200mのレースで前後半3Fが33秒8-34秒8(前傾1秒0)の速い流れだが、重馬場で前が残る展開に後ろの馬は出番なし。逃げたカルチャーデイがそのまま先頭でゴールし、2番手で追い掛けたロードフォアエースもそのまま2着に入った。唯一後ろから伸びてきたのが3着ティニア。それでも勝ち馬と4馬身半の差がついたのだから、前にいないと勝負にならない展開だったといえる。
ぶっちゃけマジでどうでもいいレースなので、思うところはこれといってないのだが、カルチャーデイの9番人気は過小評価だった気がする。昨秋10月新潟の信越S(L)は33秒4-37秒1の激流を逃げて18頭立ての最下位に惨敗したが、休み明け2戦目のタンザナイトSで5着に粘走。26キロも増えていた馬体を減らさずに前進していたことを思えば復調の気配はあったのだろう。
2歳時にファンタジーS(G3)を15番人気で勝ったように人気では計れない馬。ここまで馬場が悪いレースは初だが、道悪の鬼の可能性もある。種牡馬ファインニードルは、これからもいいスプリンターを出しそうな雰囲気だね。
終わってみれば勝たれて納得も、やる気がなさ過ぎてしっかりと各馬の戦績を調べなかった自業自得の結果。時間はあったはずなのに他のレースばかりチェックしていたのが裏目となった。敗れはしたが3着ティニア、4着ヨシノイースターは休み明けを使われた次走で期待できそう。
ただ割とガチでビックリしたのは、前売りでまったく人気のなかったティニアとカルチャーデイが当日に5番人気、6番人気(最終的には8番人気)まで上がっていたこと。確かに中間の追い切りで好時計を出していたが、みんなそれで狙ったということか。穴だと思った馬が穴じゃなくなっていた時点で読みがはずれていたという話。人と考えることが同じでは駄目だねえ。
★コメント
1着カルチャーデイ 酒井学
「気が勝ち過ぎるが、調教でコントロールがきくようになった。行きたい馬もいませんでしたのでハナへ行きました。道中もリズム良く運べ、追い出しを待てる余裕がありました」2着ロードフォアエース 浜中俊
「着差通り、勝ち馬は強かった。直線に入って離されました」3着ティニア 荻野極
「前に騎乗したときより、馬格が立派になっていた。精神的にも大人になった」
こうして3つのレースを振り返ってみたが、思えば全部勝った馬の騎手が好判断好騎乗で勝利していた。やはり競馬は騎手、騎手のミスで負けるのは自己責任説には引き続き反対の立場を貫きたい。