岩田望来、戸崎圭太、モレイラの三つ巴濃厚…桜花賞の展望と攻略ポイント
今週末には、桜花賞(G1)を皮切りに3歳世代のクラシックが開幕。第85代桜の女王の座を手にするのはどの馬だろうか。まずは登録馬と騎乗予定騎手を確認する。
桜花賞(G1)阪神芝1600、フルゲート18頭
アルマヴェローチェ 岩田望来
ウォーターガーベラ 武豊
ヴーレヴー 浜中
エリカエクスプレス 戸崎圭太
エンブロイダリー モレイラ
クリノメイ 酒井学
ショウナンザナドゥ 池添謙一
ダンツエラン 団野大成
チェルビアット 北村友一
トワイライトシティ 松山弘平
ナムラクララ 西村淳也
ビップデイジー 幸英明
ブラウンラチェット 横山武史
プリムツァール 津村明秀
ボンヌソワレ 川田将雅
マピュース 田辺裕信
ランフォーヴァウ 坂井瑠星
リンクスティップ デムーロ
実績で頭一つリードするのは、昨年の阪神ジュベナイルフィリーズ(G1)を制した2歳女王アルマヴェローチェだ。まずはこの馬から紹介したい。
アルマヴェローチェ(牝3、栗東・上村洋行厩舎)
本馬はデビューからの2戦を横山武史とのコンビで1勝1敗。阪神JFで新たにコンビを組んだ岩田望来が自身の初G1勝ちとともに勝利する好騎乗で締めくくった。
乗り替わったとはいえ、それまでの武史の騎乗に落ち度はなく、なぜいきなり望来が起用されたのかは不可解だが、最高の結果を出したならスイッチは成功したと考える。少し前の武史なら継続騎乗でもおかしくなかったものの、G1を勝てていない近年の頼りないイメージが、関係者の不信感に繋がったのかもしれない。
また、JFから直行のローテーションも最近のトレンドを考えれば問題なし。直近の6年において直行組が好成績を残しており、21年ソダシ、23年リバティアイランド、昨年のステレンボッシュが栄冠を手にした。19年グランアレグリア(朝日杯FS)もローテとしてほぼ同じ。無敗で牝馬三冠を達成した20年デアリングタクト(エルフィンS・L)、春二冠スターズオンアース(クイーンC・G3)は、終わってみれば実力が抜けていた馬だった。
昨年のJFは1着2着の力が抜けていたため、桜花賞で着順が入れ替わったものの、ステレンボッシュに関しては直線でルメールが進路取りでミスをしており、本番でモレイラが上手く乗って逆転に成功した。これはもう北村宏司との差だったのではなかろうか。
管理する上村洋行厩舎はリーディング上位を争うほどの好成績。他厩舎に比して勝率の高さも特徴である。休み明けでも勝ち負け可能な状態に仕上げてくるだけに信じていいだろう。
エリカエクスプレス(牝3、栗東・杉山晴紀厩舎)
メンバー唯一の無敗馬が、2戦目にフェアリーS(G3)を制したエリカエクスプレス。勝ちタイム1分32秒8(良)は、2009年から芝1600mに変更された同レース史上最速だった。歴代2位のダンスファンタジア(1分33秒7)と比較しても0秒9もの差をつけた実力は本物。2着馬に3馬身という明確な差をつけてだから信頼性は上がる。
懸念材料といっても戸崎圭太くらいだが、同騎手はレッドリヴェールでJFのハープスターを撃破し、桜花賞でも2着に持ってきた。阪神芝1600条件との相性は悪くない。クラシックに強いエピファネイア産駒特有の完成度の高さが後押しする。
デビュー戦でルメールが乗った後の乗り替わりというのも好材料。有馬記念(G1)のレガレイラでも話題となったが、戸崎圭太は密かにルメールキラー。ルメールからの乗り替わりでルメールの騎乗馬を負かすことに定評がある。大型馬が勝つ桜花賞のため、456キロの馬体は増やしたいところ。
エンブロイダリー(牝3、美浦・森一誠厩舎)
扱いが悩ましいのは、そのルメールが騎乗するエンブロイダリー。2着に敗れたデビュー戦を勝ったミリオンローズが、2戦目のクローバー賞(OP)でニタモノドウシに2馬身差で完敗。巻き返しを期待されたアルテミスS(G3)でも9着に敗れて評価を下げた。
ミリオンローズが注目を集めた理由は、エンブロイダリーが2戦目の新潟未勝利で7馬身差のレコード勝ちを決めたからだ。だが単勝1.2倍のサフラン賞(1勝)で出遅れたにせよ、クリノメイの5着と凡走してしまった。勝ち馬クリノメイがチューリップ賞を制したことにより、ある程度の評価は得られたとはいえ、脆さの垣間見える戦績ではある。
しかし、その後の1勝クラスで差し切り勝ちを決めた次走のクイーンCは、なかなかの好内容。2月東京は高速馬場で行われやすい事情があったものの、1分32秒2(良)は優秀である。実際、ウォーターリヒトが勝った1週前の東京新聞杯(G3)の勝ちタイムは1分32秒6(良)だったのだから、3歳春で古馬の重賞より速い時計はG1級という暗黙ルールに合致した。
普段から競馬をチェックしている人ならピンと来るだろうが、こちらは高速馬場で行われている現在の阪神でよく見かけるタイム。そういう意味では、アーリントンC(G3)のランスオブカオス1分32秒2も評価すべき数字だ(別件バウアー)。
タイプ的にはアドマイヤマーズ産駒のため、父父ダイワメジャー産駒のメジャーエンブレムと被る。距離延長は歓迎でもなく、桜花賞を勝ってもNHKマイルC(G1)に向かいそうな血統。某メジャーエンブレムはルメールが乗って断然人気の桜花賞を4着に敗れた馬だ。
ルメール自身も芝の中距離で好結果を残す一方、マイル戦では馬の力に頼った騎乗ミスも珍しくはない。東京都阪神のコース適性はマッチするが、あっさり飛んでもおかしくない馬だろう。と思いきやモレイラが乗るようです。
ここまでが三強を形成しそうな3頭となる。
ビップデイジー(牝3、栗東・松下武士厩舎)
JF2着から逆転を狙うビップデイジーだが、かつての王道チューリップ賞(G2)を使われて3着に敗れた。
一応2戦2勝の無敗ながら8番人気の低評価を覆した2着ではあったが、トライアルで3着は物足りない内容。スローペースの流れを2番手につける絶好の位置で運びながら、ゴール前では後方待機の馬に切れ負けた。
デビュー当初から426機と小柄な馬体に加え、休み明けでもマイナス2キロも成長力に不安を感じさせる。休み明けを使われた本番では馬体を増やして出走したい。
他の馬にも魅力的な穴候補が多数
フィリーズレビュー(G2)で待望の重賞タイトルを手にしたショウナンザナドゥ、チューリップ賞を制したクリノメイ、これにハナ差2着のウォーターガーベラ、牡馬相手のきさらぎ賞(G3)で2着に入ったリンクスティップも面白そう。
過去10年の傾向としては、1番人気で勝利したのが三冠牝馬リバティアイランドのみで、最多5勝を挙げている2番人気馬がデータで後押し。最終的にどのような人気の序列となるかも注目である。