川田将雅「本来の姿」に完璧騎乗で回答…安田記念で凡走した馬との違いは?【結果分析】
ガシマンも弘平も普通に乗ってしまった感
東京11R安田記念(G1)芝1600
5月11日のNHKマイルCからスタートした東京の5週連続G1開催。数々のドラマを生んだ舞台のフィナーレを飾る安田記念(G1)は、川田将雅の2番人気ジャンタルマンタル(牡4、栗東・高野友和厩舎)が優勝した。同馬は昨年のNHKマイルC優勝以来のG1勝利。上半期で苦戦の続いた川将雅にとっても待望の今季初のG1タイトルとなった。
また、吉村誠之助の9番人気ガイアフォースが2着に食い込み、1番人気に支持されたソウルラッシュと浜中俊コンビはの3着に終わった。
ジャンタルマンタルを管理する高野友和厩舎は、昨年11月のエリザベス女王杯(G1・スタニングローズ)以来となるG1・9勝目。川田とのコンビで勝ったG1も通算4勝目であり、6勝を挙げる中内田充正厩舎に引けを取らない好相性だ。
出走メンバー的に積極策を採らなさそうな馬が多数。おそらく短距離で好戦しているマッドクール、ウインマーベルが先導すると推測した通り、最後の直線に入っても2頭がハナを奪い合った。
ラップを確認してみても前半3Fが35秒0のスロー。キングノジョーが勝った同日8Rの1勝クラス(芝1600m)でさえ、34秒8だったのだからG1級の顔触れを考えると、実質超スローだったといえそうだ。
川田将雅の完璧騎乗に唸る
そんな前残り必至の展開で笑いが止まらなかったのは、ジャンタルマンタルに騎乗していた川田将雅で間違いないだろう。
本馬が昨年優勝したNHKマイルCも前後半がイーブンの緩ペース。これを3番手から押し切った馬にとって、今年の安田記念は勝ってくださいと言わんばかりの楽な流れだった。
事実、道中は距離に不安のある2頭を前に見て悠々の3番手。おそらく18頭で最も展開が向いた人馬と思われるが、そういうポジションにつけたのは鞍上の判断。川田将雅という騎手は、常に勝ち負けを意識できるポジショニングを取っており、人間的に嫌いな当方でも消せなかったほどである。
ジャンタルマンタルが制したNHKマイルCの勝ちタイムが1分32秒4。そして今年の安田記念は1分32秒7と0秒3遅い。多少の馬場差があったとしても再現するのは容易かったはずだ。ハッキリ言って今回の川田将雅にはケチのつけようがまったくない完璧な騎乗。毎回思うが「敵ながら天晴」というところ。
2着ガイアフォースは、2年前の本レースで◎を打ったほど評価の高かった馬。西村淳也や長岡禎仁の騎乗に思うところはあったものの、凡走続きにそろそろ心が折れかけたタイミング。追い切りの動きは絶好だったとはいえ、馬券圏内に持ってきた吉村誠之助の好騎乗も光った。
ソウルラッシュの3着に関しては、信じた人も疑った人も痛しかゆしの結果だと思う。内が伸びる馬場で7枠13番から外々を回して健闘したが、先に仕掛けて後ろのガイアフォースに交わされては言い訳が出来ない。
戦前から危惧した通り、この辺がモレイラやクリスチャンとの差だろう。同じ馬でも騎手の差は明確にあり、「負けたレースを騎手のせいにしているのはセンスがないだけ」なんて寝言を言っている連中に現実を教えてくれる。
4着ブレイディヴェーグも不利な条件を克服する大健闘の部類。大外から下げることなく中団の8番手を追走。ちょうどガイアフォースやソウルラッシュと似たようなポジションだった。それでも勝てなかったのはマイル適性不足なのか。
溜めれば切れる脚を使える馬だが、出していくとG1ではワンパンチ足りない感じかもしれないね。こういうタイプはむしろ超のつくスローでシンプルに瞬発力勝負の向く展開になるケースだと思った。
6着シャンパンカラーは、SNSの一部でも話題になったように復調気配がうかがえる近走でもあった。スタートで出遅れたのが痛恨で、このメンバーで上がり最速33秒6をマークしてこれなら上々。ただこの手の馬は思わせぶりな感じで来なかったりするから過大評価は避けたい。個人的に9番人気のNHKマイルCで◎を打ったときにやり切った気もする。
マイラーしか来なかった背景
あと触れておきたいのは、展開や馬場を意識していたにもかかわらず、凡走してしまった人馬たちだ。
3番人気のルメールとシックスペンスだが、乗り方としては理に適った4番手。勝ち馬のジャンタルマンタルとそう変わらないのだから、これでルメールを責めるわけにはいかない。
本馬の場合、毎日王冠(G2)を圧勝した舞台設定と1ハロン違いでしかなかったが、やはり前走の大阪杯(G1)で凡走した原因が特定できなかった。高速馬場で上がり勝負なら持って来いの展開。しかし、何もできずにズルズルと下がって12着は残念としかいいようがない。
こちらに関しては、ジャンタルマンタルも前走の香港マイル(G1)で不可解な凡走をした仲間だったはずだが、予想で触れたように川田と同じ内弁慶タイプか。国内で凡走したシックスペンスに比べれば巻き返す可能性もあった。
NHKマイルC優勝馬って、G1勝ちがそれだけですみたいなタイプも多いから、強い馬だよね。まあ相手をハメたとはいえ、あのアスコリピチェーノに勝てたんだから信じてよさそう。
総じて言えそうな話があるとすれば、純粋なマイラーしか好走しないレース結果だったといえないだろうか。これは前後半や道中のラップにも絡んでくるのだが、1ハロン短い組や1ハロン長い組に割り込む余地がなかったように感じる。
もっと強気に乗るべきだったかもしれない2人
まあそれもこれも坂井瑠星と松山弘平の作ったラップにカラクリがあったと推察したい。
勝ちタイム1分32秒7が超スローに近いことを説明したが、前後半3Fが35秒0-34秒3(前傾0秒7)で4Fも46秒7-46秒0(後傾0秒7)と遅かった。
何の先入観もなくこのラップのみを見れば、あと一歩で馬券圏内を脱落したウインマーベルの5着をスローが味方した好走に思えるかもしれない。
だが、毎週欠かさず馬場のチェックをしている身としては、こういうラップは紛れが発生しないラップ構成に映る。そもそも馬場造園課が水面下でやっている悪行は、ハイペースでも前が止まらない超速馬場の仕込みだ。
マッドクールやウインマーベルのような1400までのタイプは、意図的にペースを上げないと距離が持たない。だから逆説的に考えた場合、スローに落とし過ぎたからこそ捕まってしまったという見解である。もしこれが後傾0秒7ではなく、前傾0秒7だったならば、もっと際どい着順だったと思う。
その理屈はペースを上げることにより、後続の脚をなし崩しに使わせて追走を押っつけ押っつけにする。上げ過ぎるとバッタリ止まってしまうが、これくらいの馬場なら惰性で誤魔化しも利く。ウインマーベルの上がりにしても34秒7なんかじゃなく、むしろ35秒台や36秒台でもいいと思っていたくらいだ。
これはあくまで推測の範囲のため、断言はできないものの、今のような馬場なら35秒0なんて刻まないで33秒8くらいでもよかったのではないかと思う。ヒシアケボノの安田記念やグラスエイコウオーのNHKマイルCみたいなイメージかな。伝わる人には伝わると思う。
東京新聞杯のメイショウチタンは違うよ(笑)。あれはただのクソ超速馬場を前にいただけなので。あ、でもウインマーベルのラップはこれに近いからよくなかったんじゃないかと言ってる。
あーしが期待した理由は予想記事をご覧ください。
では最後に各人馬のコメント。
1着ジャンタルマンタル 川田将雅
「久しぶりにこの馬らしく走ることができてとてもホッとしています。前半は、とても良いスタートを切ってくれて、良いリズムで3番手におさまりかけたのですが、外から来る馬もいて、あそこでかなりエキサイトしたので、その後はどうなっていくかと思いました。前走は全く競馬にならずに終わってしまったので、4コーナー手前で苦しさで動けなくなっていました。なので、全く違う本来の姿を今日はお見せできたと思います」2着ガイアフォース 吉村誠之助
「レース前の雰囲気は程よく気合いが乗っていて、これくらいなのかなと思っていました。ある程度良いスタートを切って、良い枠から、良い所で競馬が出来ました。最後は馬場の良い所に持ち出せたのは良かったです。ただ、3~4コーナーでごちゃついてしまって、少しだけ下げるような形になってしまいました。その部分だけがもったいなかった」3着ソウルラッシュ 浜中俊
「調教から乗せてもらって、返し馬などからも状態は良く感じました。ゲートまで何のトラブルもありませんでした。行く馬がいなかったので、ペースが遅くなるだろうという判断はありましたが、初速の部分での器用さがもう一つでした。最後は良く追い上げてくれましたが、残念でした」4着ブレイディヴェーグ 戸崎圭太
「スタートも良かったですし、スピードの乗りも良かったので思った以上のポジションが取れ、4コーナーを回る時も手応えがありました。伸びてはいますが、周りの方が伸びていました」5着ウインマーベル 松山弘平
「スタートは一番速かったです。サウジアラビアからの遠征帰りで、苦しい部分があったと思うのですが、そんな状況でもよく頑張ってくれました。展開も良いほうに向いてくれました」6着シャンパンカラー 内田博幸
「ゲートで反応しませんでした。最後は伸びていましたが、GIであのゲートでは厳しいです」7着エコロヴァルツ デムーロ
「良いスタートを切れましたが、その後に不利があって(位置が)下がってしまいました。ごちゃついて馬場の悪い所を通るような形にもなってしまって、もったいなかった」10着マッドクール 坂井瑠星
「状態は良さそうでした。行く馬も見当たらなかったし楽に逃げられました。直線も残り200mくらいまでは頑張っていましたが、最後の100mで脚が上がってしまいました」12着シックスペンス ルメー
「4コーナーまで丁度良い感じでしたが、緩い馬場で自分のリズムで走れず、最後に伸びを欠いてしまいました」