無敗の三冠馬(仮)クロワデュノール登場!…色気も残したい皐月賞の展望と攻略ポイント
先週の桜花賞(G1)は、直線でアロマヴェローチェとデッドヒートを演じたエンブロイダリーが優勝した。
両者の明暗を分けたのは、ロスのない競馬のアドバンテージを味方にしたモレイラと外を回した岩田望来の差かもしれない。2頭の力差はなかっただけに、マジックマンの神懸かり的な進路取りの巧さが際立った。
ただ望来もパートナーの力を出し切る好騎乗であり、モレイラが上手過ぎたのも不運。勝ちに等しい敗戦だったのではないか。
皐月賞(G1)中山芝2000、フルゲート18頭
アスクシュタイン 未定
アロヒアリイ 横山和生
ヴィンセンシオ ルメール
エリキング 川田将雅
カラマティアノス 戸崎圭太
キングスコール 藤岡佑介
クロワデュノール 北村友一
サトノシャイニング 西村淳也
ジュタ 坂井瑠星
ジョバンニ 松山弘平
ジーティーアダマン 岩田望来
ドラゴンブースト 丹内祐次
ニシノエージェント 津村明秀
ピコチャンブラック 石橋脩
ファウストラーゼン 杉原誠人
フクノブルーレイク 松岡正海
マジックサンズ 佐々木大輔
マスカレードボール 横山武史
マテンロウバローズ 未定
ミュージアムマイル モレイラ
ローランドバローズ 岩田康誠
今週は牡馬クラシックの皐月賞(G1)が開催。戦前からエリカエクスプレス、アルマヴェローチェ、エンブロイダリーの三強ムードだった桜花賞に対し、こちらは3戦無敗でホープフルS(G1)を快勝したクロワデュノールの一強状態。4連勝で一冠目を制すれば、無敗の三冠馬(仮)も視野に入ってくる。
クロワデュノール(牡3、栗東・斉藤崇史厩舎)
不動の大本命馬も昨年6月東京のデビュー戦は、ルメール騎乗のチェッキーノ産駒アルレッキーノが単勝1.7倍の断然人気。クロワデュノールは6.1倍の3番人気に過ぎなかった。
しかし、結果は余裕の手応えでライバルに2馬身半差をつける大楽勝。タダモノではないと感じたファンも、続く東京スポーツ杯2歳S(G2)で1番人気に支持する。陣営の評価はすこぶる高く、重賞にもかかわらず、「七分八分くらいのデキ」で2着サトノシャイニングを返り討ちにしてしまった。
さすがに調子に乗り過ぎだろうと思いきや、成長分だとしても24キロ増の馬体で押し切ってしまったのだから恐れ入る。3戦目のホープフルSはG1ということもあってかマイナス8キロで出走したものの、危なげのないレース運びで快勝。本番と同じ中山芝2000の予行演習も完璧にこなした。
これだけならよくある話なのだが、本馬の場合は負かした馬がステップレースで強い勝ち方をしているのが大きい。自身は直行するだけにもかかわらず、横の比較で相対的に評価が上がった。未対戦で不気味な相手といえば、毎日杯(G3)を圧勝したファンダムくらい。皐月賞はほぼ能力比較で勝負付けが終わった感のある馬ばかり。目標の日本ダービー(G1)に向けて通過点としたいところだ。
あえて粗探しをするなら鞍上の北村友一か。G1勝ちの実績はあるとはいえ、これまで神騎乗といえるものもない点。モレイラやルメールらに比べると信頼度は下がる。ただクロワデュノールの武器は抜群の操縦性と好位で競馬のできるセンスの良さ。鞍上の不安も杞憂に終わる可能性が高い。
サトノシャイニング(牡3、栗東・杉山晴紀厩舎)
東スポ杯でクロワデュノールの軍門に下ったサトノシャイニングだが、最強馬に最も肉薄した馬でもある。前が残る高速馬場の東京で逃げたため、馬場と展開の恩恵もあっての好走に映ったが、次走のきさらぎ賞(G3)で圧巻の走りを披露した。
同レース2着リンクスティップは桜花賞でも3着に好走。3着ランスオブカオスもアーリントンC(G3)で重賞初勝利を決めた。こちらはこちらで相対的に自身の評価を押し上げている。管理する杉山晴紀厩舎としても、桜花賞のエリカエクスプレスが1番人気で5着に敗れたばかり。リベンジのかかる大一番となる。
北村友一が不安なライバルに対し、初コンビのきさらぎ賞で完璧に乗りこなした西村淳也の継続騎乗も心強い。通常リーディングもWIN5リーディングもトップクラスの成績を残しており、北村友一を圧倒している。
エリキング(牡3、栗東・中内田充正厩舎)
3戦無敗はクロワデュノール1頭ではないぞといえるのはエリキング。川田将雅×中内田充正の黄金タッグだけに人気を集めるはずだ。デビュー戦から優等生のレースで3連勝。ホープフルS出走はないものの、京都2歳S(G3)で重賞も制した。
バカに出来ないのは野路菊S(1勝)、京都2歳Sと2戦連続でジョバンニを返り討ちにしていることだ。ジョバンニはホープフルSでクロワデュノールの2馬身差2着。エリキングがつけた着差はそれぞれ半馬身、1馬身1/4だった。着差のインパクトでは見劣るものの、ジョバンニもその後の若葉S(L)を勝った。弱い馬ではない。
別の角度ではオーナーが飛ぶ鳥を落とす勢いで活躍中の藤田晋氏というのも追い風か。『ウマ娘 プリティーダービー』(Cygames)で有名な同氏だが、新参の馬主がこれほど短期間でG1を勝ちまくるケースは珍しい。持っている人間だけに豪運ぶりは侮れない。
ただこの手の無敗馬は、かつてのモノポライザーやフサイチジャンク、アグネスゴールドらも思い出す。走ってみないことには分からないか。あ、完全に一致した馬がいたぞ。マイラプソディーさんだわ。
敗れた馬の巻き返しにも期待
結果的にかませ犬のような扱いとなってしまったが、共同通信杯(G3)を快勝したマスカレードボール(ホープフル11着)、スプリングS(G2)を制したピコチャンブラック(ホープフル13着)、弥生賞ディープインパクト記念(G2)勝ちのファウストラーゼン(ホープフル3着)も見どころ十分のいい勝ち方をした。
先述の2頭は実力を発揮できないままの惨敗、ファウストラーゼンもスタート直後に大きな不利を受けての巻き返し。当日の天候や枠順に馬場。まだまだ不確定要素も多く、クロワデュノール一強で仕方なしと決めつけてしまうのはまだ早い。
改めてホープフルSのレース映像を見直してみても、上位2頭は内枠を引いてインの経済コースを走れるメリットも大きかった。しかも特に不利もなく回れたのだから過信は禁物だ。
強い馬が強い勝ち方をするのも面白いし、アッと驚く大波乱に度肝を抜かれるのも競馬。中間の追い切り、枠順なども踏まえて最終結論を出したい。