皐月賞狙い撃ったJRA史上初のトラップ…「予想外の魔改造」がクロワデュノールを襲う
皐月賞当日の中山は高速化必至
20日、中山競馬場では牡馬クラシックの皐月賞(G1)が開催される。
昨年のホープフルS(G1)を快勝したクロワデュノールは内過ぎず外過ぎずの5枠10番。心配された週末の空模様も曇りの想定で降雨の心配はなし。1番人気想定のクロワデュノールにとっても、未経験の道悪より安心感がある。全人馬が不利なく力を出し切れるレースを期待したい。
既に無敗の三冠馬という声も聞かれる大本命馬だけに、ほぼ当確ムードすら漂うが、良馬場濃厚とはいえ、時計が速くなりそうな点については少し気にした方が良さそうだ。
3月上旬の中山は絶好の超速馬場だった。オーシャンS(G3・3月1日)のママコチャが芝1200mを1分7秒1で駆け抜け、中山記念(G2・3月2日)のシックスペンスが芝1800mを1分44秒8のレコードで勝利。これだけ速い時計が出ながらも前半はスローペースだったのだから酷い。
同じ超速馬場でも芝2000mで1分56秒2の出た大阪杯(G1)は、デシエルトが暴走した結果の賜物。ハイではなくスローでレコードの出る馬場だったことが中山との違いだ。
阪神と中山で大きな違い
ところが3月下旬の悪天候で馬場が急激に悪化。都内でも雪が降り、阪神でも重馬場となった。ただリニューアル後の阪神は水捌けもよく中山ほどダメージは残らない。大阪杯で超速馬場となり、稍重だったにせよ桜花賞(G1)のエンブロイダリーが1分33秒1で勝利。2着アルマヴェローチェも上がり最速33秒9を使ったほどである。
対する中山はというと、全体的な時計も一つ二つ遅くなり、上がり3Fで33秒台も出なくなった。
多少展開に左右される中距離よりもテンから飛ばす芝1200mの方が分かりやすいか。
超速馬場だった3月初旬と下旬で1分7秒4と1分9秒0と大きな差がついた。
だからこそ、ここまで悪くなると皐月賞が控える最終週で馬場造園課が魔改造する可能性があるなと予測し、どうするんだろうかという話も何度かした記憶がある。
そんな懸念を吹き飛ばしたのが先週の中山。メインレースの春雷S(L)でヨシノイースターが1分8秒0で勝ったのだ。AコースからBコースに替わったとはいえ、稍重でこれなら高速馬場の部類。なんだかんだで帳尻を合わしてきたなと感心していた訳だが、JRAのやり口は想像の斜め上をいった。
予想外の魔改造がクロワデュノールを襲う
最終週の中山は、なんとCコースで行うという。【皐月賞】史上初のCコース使用 騎手の反応は… 99年から昨年まではBコースで一貫って日刊スポーツさんが記事にしていたよね。
どうやらこれ史上初らしい。騎手会の承認を経てフルゲート17頭だったのを18頭にしたんだってさ……。入念な仕込みだねこれ。
では一応Cコースの確認でもしようか。
スタート地点は4コーナーを曲がり終えたホームストレッチの右端。単純に芝1800mのスタート地点が200m右へスライドしたところ。
最初の1コーナーまでの距離は約405m(Aコース時)。1~2コーナーの中間までは上り坂。その後は内回りコースに入り、向正面の直線は平坦。3~4コーナーはスパイラルカーブで、緩い下り坂になっている。最後の直線距離は310mと、中央4場の中では最短。なおかつ、ゴール前には高低差2.4mの急坂がある。
なお、仮柵によるコース設定はA、B、Cの3パターン。最初のコーナーまでの距離が十分ある上、途中1度目の急坂があるので、前半からペースはさほど速くならない。
1~2コーナーまではゆったり流れ、向正面に入るとペースアップ。3コーナーの残り600m地点からラストスパートに入る。最後の直線に入ると2度目の急坂により、最後の1ハロンの時計がグッとかかる。他場の2000mよりもタフなレースになりやすくスタミナを要する。勝ち時計も2分を切りにくい。
平均勝ち時計が3歳以上重賞より3歳以上準OP・OP特別の方が速くなっているが、紫苑SやレインボーSなど、準OP・OPのレースが時計が最も出やすい秋開催に組まれているからだ。
一方、重賞は中山金杯と京成杯は冬場のレース。弥生賞はスローペースになりやすく時計が遅くなりがちと、時計が出にくい要素を抱えている。スロー~平均ペースで流れれば逃げ、先行勢が圧倒的に有利なコース。前半の先行争いが激しくなり、ハイペースになった時のみ派手な追い込み、大外一気が決まる。
枠順は内枠が有利。外枠は多頭数になるにつれて厳しくなる。
●クラス別水準ラップ(3F-4F-3F)と勝ち時計
2歳OP特別・重賞(35.6-49.9-36.0=2.01.5)、3歳以上500万(36.6-49.3-35.8=2.01.7)、3歳以上1000万(36.5-49.1-35.8=2.01.4)、3歳以上準OP・OP特別(35.9-48.5-35.5=1.59.9)、3歳以上重賞(36.2-48.7-35.5=2.00.4)
だそうです。まあBからCに替わったところでコースそのものに大きな変化はないが、馬場の傷んだ内側がカバーされるのはお約束だ。
つまり、Bコースでも稍重で1分8秒0が出ていたにもかかわらず、Cコースに替わることで高速化に拍車がかかるって訳。こりゃジャスティンミラノがマークした1分57秒1の更新まであるかもしれねえぞ~。まああのときはメイショウタバルが暴走したけど、4角2番手のジャンタルマンタルが0秒1差3着、勝ったジャスティンミラノだって4角で4番手だったもんなあ。
じゃあ勿論、各馬の持ち時計は結果を左右する大きなポイントとなる。
芝1800mのランキング
芝2000mのランキング
芝1800-2000m(中山限定)のランキング
便宜上、最後の中山限定のみ馬場差(補正あり)が反映されたものとなっている(タイム順にすると1800か2000のどちらかしか表示されないため省略)。
で、やっぱり気になるのはクロワデュノールさん。
ここまでの3戦をチェックするよ。
前後半3F36秒9-33秒9(後傾3秒0)の超スロー。上がり2位に0秒5差で楽勝。
前後半36秒1-33秒4(後傾2秒7)の超スロー。24キロ増でサトノシャイニングを撃破。
前後半5F61秒4-59秒1(後傾2秒3)の超スロー。ファウストラーゼンがマクって3着。1着クロワデュノールは外、2着ジョバンニは道中でインの好位から追走した。外を回して突き抜けた勝ち馬と、内の経済コースを走って直線だけ外に出したジョバンニとの力差は着差以上ある。
だがしかし、クロワデュノールがスローペースのレースしか経験していないのは確か。勝ちタイム的にもレコードに近い速いレースない。
これってさ、当初は道悪ならわからないという考えだったけど、逆に超速馬場の経験がないってパターンになりそう。
結局は重箱の隅をつつくような内容であることは認めざるを得ないが、この超速馬場って奴は何かとマギレを呼びやすい。
差し追込み馬に末脚不発の恐れ
出走予定馬で積極策を採りたいタイプは、前走で逃げたジーティーアダマン、ピコチャンブラック、ヴィンセンシオの3頭。いやいや、こいつを忘れちゃいけねえファウストラーゼン。8枠17番なら杉原君の迷いもなくなっただろう。
超速馬場ってのはラップこそ速くても後ろの馬が間に合わないのが特徴。これなら多少暴走気味に飛ばしても残せてしまいそうな気がする。
どの騎手にも同じことが言えそうだが、勝ちたいなら強気に乗れって話に落ち着きそうである。
それにしてもJRAは油断ならないなあ。
はてさて、どうなることやら。