「暴走王」浜中俊だからこそ勝てた…セキトバイーストはなぜハマったのか【府中牝馬S回顧】

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「暴走王」浜中俊だからこそ勝てた…セキトバイーストはなぜハマったのか【府中牝馬S回顧】

常識人にはマネできない騎乗

東京11R府中牝馬S(G3)芝1800

これまでの秋開催から6月に前倒しとなり、グレードもG2からG3に降格しただけでなく、長らく続いたマーメイドS(G3)の消滅も発生した府中牝馬S。今年の番組改編は近年にないレベルで日程や条件が変更されており、相変わらずうんこJRAが何をやりたいのかは謎である。

で、その府中牝馬Sを制したのは、浜中俊が騎乗した5番人気セキトバイースト。率直な感想として、むしろなぜ伏兵扱いだったのか分からないほどの評価だったかもしれない。

まずは独断と偏見で本レースを解説をしてみるので確認して欲しい。

14頭立て芝1800mの一戦は、丸山元気のエリカヴィータがハナを切り、1000m通過が58秒9のペースで進んだ。ラップバランスとしては遅くも速くもなくイーブンに近い。とはいえ、道中で12秒台が刻まれたのはテンの1F(12秒6)とラストの1F(12秒2)のみ。全体的な流れとしては緩急のつかないよどみない流れだ。ちょうど宝塚記念(G1)のメイショウタバルと同じ感じか。

もちろん、小刻みに脚を使わされるラップは脚が溜まりにくく、後ろの馬にはきつい展開となりやすい。東京の馬場は先週のパラダイスS(L)が前残りしたように、ワンテンポ早いくらいの仕掛けが望ましい状態でもあった。

むしろ逃げて6着のエリカヴィータ、番手で5着タガノエルピーダは余すところなく力を出し切っての結果。力のある馬は好走し、ない馬は凡走する。そんなレースだったように思える。

なぜセキトバイーストが勝てたのか

そこで注目したいのは勝ったセキトバイーストと浜中俊のコンビ。7枠12番の外枠を引いたことで少し手間取ったが、徐々に進出して3コーナーでは2番手までポジションを押し上げることに成功している。

対する2着カナテープの大野君は動かず、逆にポジションを下げていた。これも着順に影響したはずだ。

浜中のファインプレーといえるのは、怯むことなく常に前々を意識して積極的に乗ったこと。直線入り口で3番手といっても、それはエリカとタガノが反発しただけ。直線の長い東京コースを意識すると、ワンテンポツーテンポ追い出しを待ちたくなるが、そこで吹っ切れているのが浜中だ。

実際、この展開には伏線もあった。それが、3馬身半差で楽勝した前走の都大路S(L)である。

当時のレース回顧でも触れたが、このときの浜中も常識に引っ掛からない暴走をしていた。当時の京都開催は完全に差し馬天国の差し馬場。馬場チェックをしているこちらも、当然ながら差し馬中心に予想を組み立て、逃げ先行勢は苦戦すると睨んでいた。

しかし、1000m通過57秒5という明らかなオーバーペースで逃げたケイアイセナがバタバタにならないまま6着に粘り込み、この激流を直線2番手というバカかアホかと言わんばかりの位置につけていたのがセキトバイーストと浜中俊のコンビだったのだ。

普通に考えれば、勝てっこないようなペースと位置取り。それでも中途半端な速さではなく、暴走気味のラップにまで行ってしまえば、逆に追走する馬も脚が溜まらない。もちろん馬がそれに耐えうるくらいに強くなければ勝てないのだが、これで大楽勝したセキトバイーストのスタミナにも驚かされた。

こんなことができるのは「体内ラップが壊れているクソ野郎」にしかできない。そしてそれができてしまうのが浜中俊なのである。

一言に「逃げ」といってもいくつかのパターンがある。近年で有名なのはパンサラッサのような大逃げか。宝塚記念のメイショウタバルは、ミホノブルボンのようなラップの刻み方が合っているのだと証明されたばかりだった。

じゃあセキトバイーストはどちらのタイプなのか。これはもうパンサラッサタイプだと火を見るより明らか。それを成功するためのスタミナも備えているからだ。そして、これまでのレースで一度も33秒台の足を使ったことがないことから分かる通り、悲しいほどに切れる脚がない。

つまり、飛ばしても前が残る現在の東京芝で暴走するのは、スタミナのある馬にとって最善の策だったともいえる。

ラップ感覚のなさがピンかパーかでハマった

悪口を承知で話せば、ラップの速い遅いをいちいち気にする余裕のないアホだからハマった。

これはもう浜中俊という騎手の性分なのだろう。過去にもジャパンC(G1)のキセキで5F57秒9の暴走をやらかした前科持ち。その反面、ラップ感覚がないからこそ引くことを考えなかった2019年の東京優駿(G1)でダービージョッキーの栄誉を手に入れることができた。ちなみにこのレースは前残りの超速馬場で行われ、リオンリオン横山武史が1000m通過57秒8という大暴走を演じていた。

それを終始2番手で追走したのがロジャーバローズと浜中。言ってしまえば非常識なラップ感覚の持ち主だからこそ最高の栄誉を手にすることができた訳だ。そういう意味ではクビ差2着のダノンキングリー戸崎圭太は常識人である。変態じゃないから勝てなかったのが真実だろう。

今回の予想で◎ラヴァンダ、▲セキトバイーストにした理由はこれだ。ただ諸刃の剣でもある浜中だけに、◎は安定感の出てきた岩田望来にしただけ。彼も外枠から上手く乗って3着は確保した。

これがもし差し馬場だったなら結果も異なった可能性があるものの、馬場状態といい騎乗した馬といい浜中といい、すべてがマッチしていたのだから結果もついてくる。

2着カナテープにしても大野君が大野君だから、浜中の上がったタイミングで下げてしまっている。彼もまた常識人だったのだ。

かといって、浜中が頭を使って乗っているのかとなると話は別。厳しいことを言うようだが、「ぶっちゃけ何も考えてない」に違いない。だって考える騎手ならもっと勝っているはずだもの(辛辣)。

だから自分はこれを、しらさぎS(G3)の坂井瑠星のような「考えて勝った好騎乗」ではなく、「結果的にハマっただけ」のレースと思う。実は最初からお膳立てが揃っていただけに過ぎない。

このレースで浜中を褒めるより、得意の芝1800mで12番人気ウンブライルを4着に持ってきた石川裕紀人を褒める方が、今後の馬券的にもよほど価値と意味があるのではないか。※諸説あり。

カナテープは2着に頑張ったけれど、これなら1キロ重くてもダミアン君で見たかったかなというのが本音。53キロの大野拓弥より1キロくらい重くてもレーンの方が上手いからだ。そういう想いが強過ぎた結果、大野君に大幅ダウンしても3番人気に留まったため、これじゃ面白くねえと切って134着だったのだから自業自得である。

最終的なまとめとしては、逃げ馬に浜中を乗せるのは誤りだが、馬のタイプによっては正解というケースがあるってこと。メイショウタバルやソウルラッシュは勿体ないけど、セキトバイーストとはいいコンビになりそうな予感がする。以上です。

コメント

1着セキトバイースト 浜中俊
「勝てて嬉しいです。他に行く馬がいたので、あくまでこの馬のリズムを優先した結果、あの位置になりました。たまたま良いタイミングで騎乗させてもらっているだけだと思いますが、こうして重賞を勝てて、ここからさらに弾みをつけてくれると思うので今後が楽しみです」

2着カナテープ 大野拓弥
「スタートが決まりましたし、勝ち馬を見ながら良い走りでした。一瞬つかまえられそうな感じでしたが、最後は脚が一緒になってしまいました」

3着ラヴァンダ 岩田望来
「もう一列前で競馬が出来たら良かったが、枠的にも厳しかったですからね。ハンデも厳しく、見込まれたなという感じでした。馬は目一杯走ってくれました。また秋に頑張ってくれたら」

4着ウンブライル 石川裕紀人
「枠順も良かったし、ロスなく末脚を生かすイメージで狙った競馬でした。これを機にまた良い競馬が出来たら」

5着タガノエルピーダ 団野大成
「馬の具合は良かった。距離はこなしてくれたと思います。最後、坂を登って、残りひとハロン手前まではなんとか踏ん張ってくれましたが、登りきってから少し疲れが来たのかなと思います」

8着カニキュル 戸崎圭太
「凄く落ち着きがあって精神的な成長を感じました。内枠でロスなく運ぶのが理想でしたが、今回は外枠で折り合いもあり、ポジションは取れませんでした。結果的には内を回ってくれば良かった感じです」