イクイノックス、ドウデュース世代に被る声も…「各馬に不安」生まれたダービーを占う
ダービーで勢力図に異変が起きるのかどうか
中山11R皐月賞(G1)芝2000
断然人気に推された2歳王者クロワデュノールが2着に敗れ、3番人気ミュージアムマイルが大金星を挙げた今年の皐月賞(G1)。無敗の三冠馬候補と期待された大本命の敗戦により、日本ダービー(G1)の行方も一筋縄では読み解けない状況になりつつある。
母数は少なくとも、過去無敗でホープフルS(G1)を制した馬が皐月賞に直行したケースは、サートゥルナーリア(2019年)、コントレイル(20年)が2戦2勝で100%。近6年でもエフフォーリア(21年)、ソールオリエンス(23年)、ジャスティンミラノ(24年)といった無敗馬が優勝しており、6戦5勝とハイアベレージだったにもかかわらず、負けてしまった。
これを踏まえた上で次に考えるべきは、勢力図がどのように変化するか。
結果的に負けはしたものの、クロワデュノールの強さを否定するほどの凡走でもなく、どちらかというと展開のアヤや鞍上の実力不足を露呈した格好。殊勲のタイトルを手にしたミュージアムマイルにしても、馬の状態がよかったとはいえ、モレイラではなく幸英明の継続騎乗で勝てたイメージもしにくい。
再評価されたマスカレードボールも鞍上の不安が付きまとう
そういう意味では3着に入ったマスカレードボールの善戦は評価できる。共同会見で横山武史から「中山は合わない」という言葉も聞かれたが、冷静さを欠いて惨敗したホープフルSの印象を払拭する好走ではなかったか。
皐月賞に関しては武史が過怠金5万円の制裁を課されたとはいえ、被害対象の川田将雅エリキングに弾かれてポジションを下げる痛恨の不利もあった。それでも「中山が合わない」のが正しいなら、得意の左回りに替わる日本ダービー(G1)で大きな前進があるだろう。
ただ今度は「東京なら全幅の信頼を置ける」と決めつけてると、逆に罠になる可能性も否定できない。
というのも武史はアーバンシックでルメールに、ダービーで1倍台のエフフォーリアやソールオリエンスで福永祐一やD.レーンとの差を見せつけられた過去もあるからだ。
ファン心理的には皐月賞のクロワデュノールと似たような感覚に陥る可能性もあるだろう。反対にクロワデュノールは初黒星を喫した結果、無敗で挑むよりもプレッシャーは軽くなる。そもそも直行で挑んだなら使われた上積みに期待出来るのだから、ダービーこそ100%の悔いのない仕上げで出走してくるはずだ。
ホープフルS前に当方が東西の横綱候補として名前を挙げた両馬だけに、ダービの楽しみは増した感もある。
対するミュージアムマイルは扱いが難しい。弥生賞の敗戦は皐月賞を見据えたものでもあり、幸英明の乗り替わりが前提だったはずだ。馬体も良化し、青写真通りにモレイラが勝利に導いてくれたとはいえ、前述2頭に比べれば上積みが怪しくなる。
モレイラが今週末で帰国する割引の替わりにD.レーンの来日が噂されているため、ダービージョッキーでもある彼が手綱を取るようなら相殺されそうだが、個人的には少し引っ掛かる。
3年前のクラシックのイメージに近い?
メディア向けの原稿ではないから多少主張の強い記事を書いても許される前提で話せば、どこかしらジオグリフっぽい激走の匂いもした。筆者以外にも同じ印象を持った人がSNSでいたため、ただの独りよがりでもなさそうだ。
この年は先に抜け出したイクイノックスをジオグリフが交わし、後方から追い込んだドウデュースが脚を余す格好で3着に入った。上位3頭の着差は0秒3で今年とも完全に一致している。
大一番のダービーでは武豊が「騎乗ミス」の汚名を返上して勝利し、イクイノックスのルメールがスムーズな進路取りをできずに2着。皐月賞馬ジオグリフは7着に凡走した。後から出てきたダノンベルーガが春二冠で1番人気の支持を集めたが、世代の評価としてはイクイノックスとドウデュースの二強と見る声も多かった。
ジオグリフが朝日杯FSで負けたり、トライアルで負けたところも、どことなくミュージアムマイルに被る気もしてくる。独断と偏見を承知の上で話すと、個人的にまだ本質はマイラーというイメージも残る。
まあ本音を話すとまだ結論どうこうのタイミングでもないため、あーでもないこうでもないと思いを馳せて楽しんでいる段階。もしイクイノックス、ドウデュース世代の再現があるなら、マスカレードボールがダービーを勝ち、クロワデュノールがまたしても2着、ミュージアムマイルは伸び切れず。なんて想像もできるという程度だ。
皐月賞にしても「モレイラは完璧だった訳でなく、馬が強かったから勝った」「誰が乗っても勝った」という強気な意見も目にした。結局のところ、やってみないと分からないことに変わりはない。
今年のダービーはハイレベルで面白そう
だが、「最も運のいい馬が勝つ」といわれるダービーは、運を味方にできるだけの技術がないと勝てないことも確か。
晩年に覚醒した福永祐一の連敗も自身の実力不足が大抵の敗因だった。後に3勝もできたのは馬質に恵まれただけでなく、それを結果に繋げられる技術を手にれることに成功した賜物だ。
12番人気ロジャーバローズで初優勝を決めた浜中俊にしても、馬場造園課が内しか伸びない超速馬場を仕込んだのを最大限に利用できる1枠1番の絶好枠を味方にし、2着もここ一番で頼りにならない戸崎圭太がクビ差に敗れてのもの。こういった結果も人馬や枠の運不運が絶妙に絡み合った。
また、皐月賞の三強以外でも毎日杯(G3)で強い勝ち方をしたファンダムの存在も気になる。何となくディープスカイのような雰囲気も持っているからだ。かといってこの馬も鞍上がよりによって北村宏司な訳だから、これまた大きな不安材料である。
そう考えると上位人気想定の馬の鞍上が、ほぼ何かしら信頼しにくい顔触れであり、これまた何があってもおかしくないダービーの予感もしてくる。
ひとつ確実に言えることがあるとしたら、ハイレベルで見応えのあるレースが見れそうなことだ。そして割とマジに秋競馬や来年になって主戦交代がありそうな面々だとも思った。