書くことが多そうなら独立した記事にするのだが、京都記念(G2)と共同通信杯(G3)にそこまで強烈な印象は残らなかった。
■京都11R京都記念(G2)芝2200
先週の東京新聞杯(G3)に出走したブレイディヴェーグに続き、京都記念は昨年のオークス(G1)と秋華賞(G1)の二冠を制したチェルヴィニアが登場した。まだ寒さを感じる時期ながら、こういったG1馬が出走するようになれば、徐々に春を感じる。
しかし、ブレイディヴェーグは4着、チェルヴィニアは単勝1.8倍の大本命だったにもかかわらず、見せ場らしい見せ場も作れず9着敗れた。本馬の実力を考えれば惨敗と言っていい敗戦である。
昨年の宝塚記念(G1)と同じ京都の芝2200m戦でもあり、舞台設定的に同レースで2着ソールオリエンス、4着プラダリアが上位人気の支持も納得できる。
だが、チェルヴィニアだけでなく、ソールオリエンスも5着、プラダリアも6着に凡走してしまっては、3連単18万8000円馬券の大波乱となっても仕方ない。
稍重で行われたレースは8番人気バビットが逃げ、セイウンハーデスも折り合いがついて暴走せず。その関係で道中のラップも1000m通過62秒9の超スロー。馬場が多少渋ったとはいえ、G2のメンバー構成ならスローだろう。
当方の想定としては、バビットはともかく抑えの利かないセイウンハーデスがつつけば、そこそこペースも流れて切れ味勝負にはならないだろうと考えていた。もうスタートから展開が決まり、残りは前にいる馬だけのレースになったと考えていい。
そういう意味ではチェルヴィニアとルメールの位置取りは決して悪くはなかった。ゲートの出はあまり良くなかったものの、ルメールも前を意識してリカバリー。馬がまともに走ってくれれば、十分に勝ち負け可能なポジションで競馬をしていた。
むしろ不満が残ったのはヨーホーレイクと岩田望来のコンビ。こちらとしては内枠を生かしたまま、インの経済コースから3番手4番手くらいで最短距離を出し抜いて欲しいイメージ。対チェルヴィニアを考えた際、先に仕掛けて貯金が欲しかったからである。
実際、勝負どころで既にチェルヴィニアが前を射程圏内に収めたタイミングにヨーホーレイクは仕掛けが遅い。これでは勝てないと感じたのも当然。勝ちたいなら4角で2番手くらいには上がっておきたかった。
ところが岩田望来が幸運だったのは、ルメールの手腕に負けても馬は勝ってくれた点だ。確かにヨーホーレイクの勝利は素晴らしいのだが、このレースは望来が勝ったというより、チェルヴィニアが勝手に負けてくれたのが真相。なぜなぜどうしてといっても敗因は分からない。
騎乗した当人のコメントによれば「馬場があまり良くなかったしペースも遅かった。休み明けもありましたが直線は全然伸びませんでした。もう少しシェイプアップしたほうがいい。こういうレースは忘れましょう。残念です。次はもう少しいい競馬を期待しています」とのこと。明確な敗因はぼんやりしているが、ルメールは馬が太いと感じていたようだ。
でもこれ正直、チェルヴィニアの馬券を購入したファンが悪い訳じゃあない。追い切りも普通に動いていたし、厩舎のコメントも強気一辺倒。答えは「馬のみぞ知る」といったところか。
あえて勘繰ればブレイディヴェーグ同様、春の海外遠征を見据えた馬。目標のG1レースでもない国内のステップレースに本気仕上げで挑む理由もない。でもさすがにちょっと舐めてるなあとも思う。一応公正競馬の建前上は、「出走する全馬が勝つために最大限の努力をする」のだから、「余裕を持たせ過ぎた作りで勝負になりませんでした。次は頑張りまーす」で許されては困る。
ブレイディヴェーグはいかにもって感じだったが、チェルヴィニアの方は、さすがに負け過ぎじゃね?そもそも過去10年のデータ的にはオークス馬のラヴズオンリーユーや秋華賞馬のクロノジェネシスが快勝した。出走当時G1・1勝に過ぎなかった2頭が勝てたなら、二冠馬のチェルヴィニアも勝てるじゃない。誰だってそう思う、俺もそう思う。
今回のWIN5が荒れた原因に1倍台の馬に乗ったルメールが、2レース連続で負けたことが無関係でないとはいえ、これらを某戸崎圭太君の様に騎手のせいで負けたと論ずるのは少々無理がある。あえていうならノーザンの外厩が悪いくらいしかいえない。ルメールはむしろ我々と同じ被害者ではなかったか。
ついでに望来のコメントだけ。
1着ヨーホーレイク 岩田望来
「強かった。思った以上にスローだったが、馬具の工夫で折り合いがついた。馬場の内側は良く、内で決め打ちした。プラス20キロの馬体重に重さは感じなかった。厩舎サイドがしっかり仕上げてくれたと思う。元々高いポテンシャルの馬で、7歳ですがフレッシュな馬」
結果的に勝てはしたが、チェルヴィニアが力を発揮していれば、思い切った騎乗とまでは言えなかったと思う。それでもやっぱりこいつは持ってる。馬も7歳でデビュー最高体重は謎だ。太くもなかったしパワーアップと見ていいかもしれない。
8歳でG1勝ったカンパニー爺さんを目指すやで~。
■東京11R共同通信杯(G3)芝1800
昨年は新馬から連勝したジャスティンミラノが皐月賞(G1)を制覇。戸崎圭太君を乗せてもG1を勝ったのだから相当強かったことが分かる。
今年はもうホープフルS(G1)を圧勝したクロワデュノールが強過ぎて終戦ムード。そのクロワに東スポ杯2歳Sで遊ばれたサトノシャイニングまで、きさらぎ賞(G3)でクソ強かった。「あぁ、やっぱりクロワって化け物だったのか」と痛感させられたのが先週のこと。
だが、レッドキングリー、てめーは別だ。と考えたのが共同通信杯。競馬ってさあ、2着と3着の間に見えない壁があると思うんだよね。力の衰えたG1馬とかにしても2着には踏ん張ってくれるもの。それが3着4着になりだすと一気に弱くなる。※個人の感想です。
この共同通信杯で真っ先に注目したのはマスカレードボール。道中のラップや勝ちタイムで東スポ杯より秀逸だったアイビーS(L)を快勝した逸材だ。前走のホープフルSこそ思わぬ大敗を喫したが、あんなのがこの馬の実力じゃあない。
それもそのはず、グリーンチャンネルで土曜競馬の中継を見ていた時に、解説のおぢが非常に興味深い話をしていたからだ。8枠18番の馬は基本最後の枠入りになるはずなのに、あのレースでは違った。もちろんリアルタイムで目撃していたこちらも、これだからJRAってやつはよお、と不満を漏らしていたのだけど、おぢがいうにはこうだ。
「私も気になって聞いてみたんですが、どうやら返し馬の段階から冷静さを欠いていて、まともに走れる精神状態ではなかったらしいのです。それで他馬に迷惑をかけてしまうかもしれないため、戸崎騎手の要望でゲートが先入りになったみたいですよ」とね。録画してないから一字一句同じではないだろうがスルーよろしく。
そんなんもうあれが実力の訳がないと信じていながらも、現実に惨敗を見てしまったからには自信が揺らいでいたのも本音。それで圧勝した同舞台に戻って追試を見たかった。その割にみんな支持して1番人気だったんだから情けねえ。俺よりファンの方がマスカレードボールを信じてるわ。
肝心のレース映像を見ただけだと楽勝って雰囲気もなく、伏兵のカラマティアノス相手に1馬身差の辛勝。たかが1勝クラスを勝った馬相手にこれでは夢がないよと思ったの。
にもかかわらず、レース後のガシマンのコメントをチェックすると意外な高評価。所詮は外野でしかない我々の感想よりも騎乗した当事者の言葉こそが正解だ。そらそうよ。
ガシマン「この馬の能力さえ出せれば勝てると思っていた。直線を向いて余裕がありすぎてブレーキをかけたが、内から馬が来たらもう一度頑張ってくれて、それだけ余裕のある勝ち方でした。持っているものは間違いなくGI級で、その能力を出せればまた頑張ってくれると思います」
うひょー!なんだこれ……大絶賛じゃねえかYO!!!
それで改めてレース映像と道中のラップを確認してみたのだが、あーそういうことかと。
まず注目して欲しいのは道中のポジション。4角の通過順はマスカレードボールが3番手に対し、カラマティアノスが5番手と表示されているけど違和感がある。だってほら、ゴール前で逃げ込みを図る相手を外からねじ伏せたように見えたよね。それならカラマティアノスが後ろの訳がないじゃん。
そのカラクリが、ガシマンのコメントだ。レース映像を見直すと直線に入ったあたりでガシマンが手綱を緩めているように見える。おそらくこれが「余裕がありすぎてブレーキをかけた」部分。その間に内からスルスルとカラマティアノスが出し抜きを狙って伸びていた。
残り400m頃に気付いたのか300mすぎくらいに鞭を一発二発入れ、慌てて追い出している。なるほど……油断して追い出しを待っていたら内で脚色のいい戸崎に気付いて焦ったのか。
着差がつかなかったことに不満はあれど、それも道中のラップを確認すれば杞憂だ。L4で11秒8からL3に入って11秒5-11秒5-11秒2と加速ラップ。むしろゴール前で最も速い数字が出た。確かに見た目以上に力の差があったからこそ負けなかったレースだったといえるだろう。
それなら「それだけ余裕のある勝ち方でした。持っているものは間違いなくGI級」というコメントとの温度差もなくなる。
マスカレードボールの出世には戸崎圭太の降板が条件と考えていたこちらとしては嬉しい結果。だけどもこの圭太ちゃんは少しばかり可哀想とも思えたよ。だって圭太ちゃんにしては、なかなかの好騎乗だったからさ。
インベタで脚を溜めに溜め、それこそ頭文字Dのブラインドアタックのような出し抜きに成功したんだよ。基本はネガティブな見方をしている相手でも、「いい圭太ちゃん」と「悪い圭太ちゃん」はいる。これは間違いなくいい圭太ちゃんの方だった。
それでも不運だったのは、マスカレードボールのガシマンが油断して舐めプをするミスを犯しながらも馬が強くて敗因にならなかったことである。渾身の騎乗を成功させて自分が降ろされた馬の強さで返り討ちに遭うってどんな気持ちなの?
有馬記念で勝利目前のところを1年ぶりのトウカイテイオーに負けたビワハヤヒデの岡部が、負けるならテイオーだと思ったみたいな感情?
こういうのはもう、その人が持っているか持っていないかの話だよね。ガシマンは戸崎にもらったマスカレードボールでミスをしても勝ち、カラマティアノスで完璧に乗った戸崎がミスをしなかったのに負ける。
まあなんて理不尽なの、世の中って。。。
これは俺も分かるよ。持ってないから。
そりゃ実力以上の騎乗馬に恵まれている点では、戸崎って幸運なんだろうけど、レモンポップの件といい、ガシマンのラッキーマンぶりはそれを遥かに凌駕しているなと。。。
というわけで、マスカレードボールにはもう少し夢を見てもいいようです。
まだまだ粗削りで本格化は先だろうしね。
ただ皐月賞はやめて欲しいなあ。ダービー狙うなら毎日杯からとか、いっそのことNHKマイルからでもいい。
まだ1回しか走ってないけど中山が向いているとも思えないよね。
■その他のコメント
2着カラマティアノス 戸崎
「返し馬から雰囲気は良かった。もたれる面もラチを使うことで、しっかりと伸びた」
3着リトルジャイアンツ 村田師
「この距離は忙しく、ついていくと、この馬の競馬ではなくなる。それでも良い脚を使ってくれた。左回りだともたれることがありません。距離はもっとあった方が良い」
4着ネブラディスク 武豊
「入れ込みは想定内。直線は弾けそうで弾けなかった。素質を感じる。これからの馬です」
5着サトノカルナバル キング
「スタートを出て良いポジションでリズム良く運べた。直線で仕掛けると、まあまあの伸び脚。初めての1800で、よく頑張ってくれた」
8着レッドキングリー 北村宏司
「ゲートを上手に出てスタートが速いので逃げる形。ただ、最後はずいぶんと止まってしまいました」
※レッドキングリーは喉鳴りの疑惑があるっぽい。書くことあまりないと話した割には長くなってしまった。