アルマヴェローチェ、エンブロイダリーに血の宿命…「偽マイラー」の伸びしろ不気味【桜花賞】
9日の水曜は桜花賞(G1)に出走を予定している各馬の追い切りが行われた。G1の晴れ舞台とあって熱のこもった動きに一喜一憂しているファンも多いだろう。
ただ、芝2000mの皐月賞(G1)が一冠目の牡馬と違い、牝馬クラシックは芝のマイル戦である桜花賞が一冠目。二冠目の優駿牝馬(G1)や東京優駿(G1)はどちらも芝2400mのため、牝馬の場合は牡馬の倍となる800mの距離延長が立ちはだかる。
ということは当然ながらマイルの流れについていけるスピードも求められ、2400mを走り切れるスタミナがあるに越したことはない。
ダイワメジャーと切っても切れない血の宿命
昨年の場合は阪神ジュベナイルF(G1)を優勝し、桜花賞で2着に入ったアスコリピチェーノがオークスに向かわずNHKマイルC(G1)を選択。これはひとえにダイワメジャー産駒だったからではなかったか。
勝ち負けできたレースで取りこぼしたのは、ジャンタルマンタルの川田がルメールをハメたからに他ならない。負傷明けで復調途上だったとはいえ、ルメールも川田の性格の悪さを忘れていたような負け方だった。
まあ競馬なのだから自分が有利な展開に持ち込み、ライバルに実力を発揮させないのは技術の内。川田の騎乗も例外ではないが、彼の場合は自分がやられた時だけアピールがうるさいのがどうかってところ。
競馬ファンとしては不利のないレースで馬券も当てたい。同じ巧さでもクリスチャンやモレイラのような巧さとは一線を画している気がする。
それはともかく今年の桜花賞有力馬を血統的な側面で見た場合、やっぱりダイワメジャーの血は無視できない。マイルまでは圧倒的な好成績を残す一方、1800mからガス欠して勝てなくなるのが大きな特徴だ。
もちろん、桜花賞では問題ないのだが、どうせなら優駿牝馬でも継続して買える馬の方がいい。
ということで血統専門家ではないことに断りを入れた上で少しばかり考察してみる。
まず筆頭はアルマヴェローチェ(父ハービンジャー×母父ダイワメジャー)。芝1800mの新馬戦を勝ち、2戦目の札幌2歳S(G3・芝1800)で2着に敗れた。新馬戦は相手が弱いとはいえ、1800重賞で勝てなくなるダイワメジャーの血が少し顔を出した可能性もありそう。
近親にスプリンターも多く、距離延長が歓迎という雰囲気もない。スタミナは母系からという定説を考えてもベストはマイルっぽい馬である。札幌2歳で敗れた相手マジックサンズはホープフルS(G1)で2番人気に推されて16着に大敗。3着ファイアンクランツも悪くない馬だが、ゆりかもめ賞(1勝)でウィクトルウェルスに敗れ、すみれS(L)もジーティーアダマンの3着に敗れた。
頼りになるのは鞍上の岩田望来だろう。JFは横山武史からの乗り替わりで制したが、現在の乗れていない武史よりは乗れている望来で結果オーライだった。優駿牝馬はともかく桜花賞では有力候補筆頭クラスの馬だ。
エンブロイダリーも距離延長に不安のあるタイプ。本馬はダイワメジャー産駒アドマイヤマーズを父に持つ。母父クロフネも距離延長に向かない。2戦目の新潟未勝利(芝1800)を7馬身差レコードで圧勝した実績を持つが、負かした相手は未勝利クラスばかり。相手が弱過ぎたと見るべきだろう。それに昨年の新潟はおかしな時計の出る高速馬場でもあった。
ルメールからモレイラのスイッチは割引材料とならないが、どうも自分の型にハマったときだけ強い競馬をする感じ。ここまで5戦のうち4戦が左回りのコースでもあり、こちらは3勝2着1回と安定しているものの、出遅れて大敗したサフラン賞は右回りの中山。桜の舞台は右利回りの阪神だけにどうか。
脚質的にもメジャーエンブレムを思い起こす。5戦中4戦で上がり最速をマークしており、切れる脚がない訳ではないが、桜花賞にはピンとこない。
距離延長に問題なさそうなエリカエクスプレス
そういう意味ではエリカエクスプレスは非常に魅力的だ。エピファネイア産駒はデアリングタクトが無敗の牝馬三冠を達成しているように距離延長も苦にしない。
ちなみに去年の10月京都のマイル戦を好タイムで走った馬が結果を残していることに触れた際、ここで引っ掛かっていたのがエリカエクスプレスとリラエンブレム。勿論この2頭だけでなく、テレサ(アルメリア賞勝ち)、ドラゴンブースト(デイリー杯2着、京成杯2着)、アイサンサン(多分)も素質馬だ。
フェアリーS(G3)を快勝したときにチェックをし、シンザン記念(G3)でリラエンブレムに◎をうったのも、これを評価しての結論だった。リラエンブレムが毎日杯(G3)で謎の惨敗を喫したが、あれが実力ではないはずだ。
まあそういう意味ではエリカエクスプレスも不可解な敗戦を喫して不思議ではないが、あんな意味不明の負けは知らんがなってことにしてスルーする。ただファンダムはヤバかった。
ではエリカエクスプレスの2戦を振り返ってみる。
新馬戦は杉山晴紀調教師が「順調で及第点の動き」「初戦から力を出せそう」とコメント。手綱を取ったルメールも「直線は楽だった」「まだ子供っぽい」と評した。
直線半ばに馬なりで先頭に立ってゴール前は押さえたまま。それで2馬身半差の楽勝なら評価できる。このときの2着馬が毎日杯のファンダムより0秒1速い時計で君子蘭賞(1勝)を制したルクスジニアだった。
約3ヶ月の休養を挟んだフェアリーS(G3)も非常に優秀な勝ち方。好スタートを決めていきたがるところもあったが圭太ちゃんが引っ張ってなだめる。そのまま好位2-3番手をキープしつつ、直線ではまた楽に抜けてゴール前は持ったまま。2戦とも上がり最速でもなければ、3位以内でもない。おそらく「偽マイラー」だ。
母父は凱旋門賞(G1)で好相性を誇るガリレオ。これは馬が強過ぎてマイルでも問題にしなかったという感じがする。そういえば杉山先生ってデアリングタクトも管理してたっけ。あの馬もエピファだしねえ。
半分予想みたいになってしまったが、エリカエクスプレスは減点が少なさそう。
大穴で狙ってみたいロードカナロア産駒
最後に優駿牝馬を見据える意味で少し興味が沸いたのは、北村友一騎乗でまったく人気しなさそうなチェルビアット。4戦目の未勝利勝ちで挑んだフィリーズレビュー(G2)で2着に食い込んで権利を手に入れた。
それまで見せたこともなかった追い込みでショウナンザナドゥに0秒1差の2着。この差は池添と机の差程度。芝1400mは短かっただろうから距離も延びた方が良さそう。阪神コースで好走した点、中距離で走っているオールナットも近親にいる。中でも最もビッグネームは2015年のジャパンC(G1)を勝ったショウナンパンドラである。
そして最後の推し材料は、春G1で大阪杯をワンツー、高松宮記念、フェブラリーSを制したロードカナロアの血。今春謎の快進撃を続けているだけに血の勢いは見逃せない。桜花賞で好走すれば、優駿牝馬でも引き続き買える馬といえる。