クロワデュノール凱旋門賞挑戦に賛否…日本競馬の夢とロマンは時代遅れ?それとも?
もう凱旋門賞至上主義は終わりでよくない?
クロワデュノールの成績
今年の東京優駿(G1)を制したクロワデュノール(牡3、栗東・斉藤崇史厩舎)が、10月5日にフランスのパリロンシャン競馬場で開催される凱旋門賞(G1・芝2400m)に挑戦することがわかった。
同馬が所属するサンデーサラブレッドクラブの発表によると、前哨戦として9月14日のプランスドランジュ賞(G3・芝2000m)をステップとして臨む。鞍上の乗り替わりはなく北村友一も継続。8月末に出国を予定している。
また、同レースにはアロヒアリイ、シンエンペラー、ビザンチンドリーム、ヘデントール、レガレイラも登録していたが、アロヒアリイ、ヘデントール、レガレイラは見送り。現時点ではクロワデュノール、シンエンペラー、ビザンチンドリームの3頭が出走の見込みだ。
日本馬の凱旋門賞挑戦はこの時期になるともはや風物詩のようなもの。いまだ越えることのできない高い壁を克服する馬は登場していないが、今年の3頭にも善戦を期待したい。
近年は惨敗と大敗の繰り返し
ただ、やはり思い浮かぶのは過去の苦い記憶だ。
日本から毎年のように有力馬を送り込んでいるものの、その結果は惜敗どころか惨敗が多数。馬券に絡む着順に好走したのは、2013年のオルフェーヴル(2着)まで遡る必要がある。そう考えると、あれから11年もの間、まったく通用していないといえるのが実情だ。
2年前にスルーセブンシーズが4着に好走したように、馬場が良好な状態なら期待以上に走るケースもなくはない。この年にイクイノックスがもし出走していれば面白かったという声も出た。
とはいえ、凱旋門賞は渋った馬場で行われる年の方が多い印象。先日の函館記念(G3)でサッカーボーイのレコードが37年ぶりに更新されたことが話題になったが、勝ったヴェローチェエラのことをサッカーボーイより強いと感じた人は皆無だろう。こんなのは馬場造園課が作り出す幻想に過ぎないことは分かっているからだ。
当たり前のことを改めて述べる必要はないが、タフさとパワーを求められる欧州と軽さとスピードが優先される日本では競馬の種類が異なる。そんな話は外国馬からそっぽを向かれたジャパンC(G1)の惨状を見れば自明の理といっていい。
それでもなお挑戦が続くのか
事実上の鎖国をしてしまった日本競馬にもかかわらず、なぜ別競技とまで評される欧州の凱旋門賞に挑戦し続けるのか。これはもう夢とロマンというよりない。
凱旋門賞が世界最高峰のレースで挑戦するに値するというロマンを日本で広めた武豊が、いまもなおチャンスがあればいつでも乗りに行くというスタンスを取っていることには共感するのだが、連れていく馬の基準については、ある程度条件面等で線引きした方がいい気もする。
これは競馬ゲームなんかでも一定の条件が設定されているはずだ。無論、過去に善戦したエルコンドルパサー、ディープインパクト、オルフェーヴルのような超のつく大物の参戦は、ファンも勝ち負けに期待するほど好意的な解釈だったことは間違いない。そして、実際彼らには勝てるだけのポテンシャルもあった。
それに対し、近年の馬は先述した3頭に比してスケール感で見劣っていたことも確かだ。凱旋門賞で惨敗するどころか、帰国後に調子を落として別馬のように凡走を繰り返す例もある。昨年引退したドウデュースにしても、フランス遠征をしないまま国内で走る姿をもっと見たかったという要望もあっただろう。
とはいえ、本馬に関してはオーナーが武豊信者という重要な要素を考慮すると、外野がとやかく言うのは気が引ける。
もう安易に挑戦する時期ではない
その一方、このようなケースを除けば「挑戦することに意義がある」という考えは、もう時代遅れなのかもしれない。今年のクロワデュノールにしても皐月賞(G1)の敗戦により、ファンが期待したほどの超大物ではないことも露呈した。それに加えて海外での騎乗経験に不安のある北村友一の続投も心情的に応援しても、本当にそれでいいのかという想いは残った。
「じゃあ何が言いたいんだよ」となる訳だが、個人的な意見を前提に話すと、もう「凱旋門賞至上主義は捨てていいんじゃないか」って話。どうも近年は安易に挑戦させているというか、語弊を承知で話せば「この馬で本当に勝てると思っているのか?」という印象を否定しきれないのだ。
もちろん、様々なタイプの馬が走ることによって各陣営にノウハウや経験が積み重なり、今後のサンプルとしても役立つことは間違いない。
競走生活を縮めるリスクを犯すより国内で見たい
しかし、もうそういう時期は過ぎ、今よりもっと現実的に勝利を意識できそうな馬だけ挑戦するようにしてもいい。
つまり、クロワデュノールの参戦で感じたことは、勝ち目のなさそうな海外遠征で馬にダメージが残るようなら国内で走らせて日本の競馬を盛り上げて欲しいということ。そりゃ出走するからには勝つチャンスもあるだろうが、本音を話せば過度の期待もしていない。現実的に勝ち負けを狙うなら、まだ日本の高速馬場と相性の悪くない香港やドバイを使う方がいい。
クロワデュノールは好きな馬だけに応援したい気持ちに変わりはないのだが、手放しで歓迎できることでもないなと思った今回の発表だった。
凱旋門賞に出走した日本調教馬の成績
回 | 施行日 | 参戦馬名 | 騎手名 | 管理調教師 | 着順 |
第48回 | 1969年 | スピードシンボリ | 野平祐二 | 野平省三 | 着外 |
第51回 | 1972年 | メジロムサシ | 野平祐二 | 大久保末吉 | 18着 |
第65回 | 1986年 | シリウスシンボリ | M.フィリッペロン | 二本柳俊夫 | 14着 |
第78回 | 1999年 | エルコンドルパサー | 蛯名正義 | 二ノ宮敬宇 | 2着 |
第81回 | 2002年 | マンハッタンカフェ | 蛯名正義 | 小島太 | 13着 |
第83回 | 2004年 | タップダンスシチー | 佐藤哲三 | 佐々木晶三 | 17着 |
第85回 | 2006年 | ディープインパクト | 武豊 | 池江泰郎 | 失格(3位入線) |
第87回 | 2008年 | メイショウサムソン | 武豊 | 高橋成忠 | 10着 |
第89回 | 2010年 | ナカヤマフェスタ | 蛯名正義 | 二ノ宮敬宇 | 2着 |
ヴィクトワールピサ | 武豊 | 角居勝彦 | 7着(8位入線) | ||
第90回 | 2011年 | ヒルノダムール | 藤田伸二 | 昆貢 | 10着 |
ナカヤマフェスタ | 蛯名正義 | 二ノ宮敬宇 | 11着 | ||
第91回 | 2012年 | オルフェーヴル | C.スミヨン | 池江泰寿 | 2着 |
アヴェンティーノ | A.クラストゥス | 池江泰寿 | 17着 | ||
第92回 | 2013年 | オルフェーヴル | C.スミヨン | 池江泰寿 | 2着 |
キズナ | 武豊 | 佐々木晶三 | 4着 | ||
第93回 | 2014年 | ハープスター | 川田将雅 | 松田博資 | 6着 |
ジャスタウェイ | 福永祐一 | 須貝尚介 | 8着 | ||
ゴールドシップ | 横山典弘 | 須貝尚介 | 14着 | ||
第95回 | 2016年 | マカヒキ | C.ルメール | 友道康夫 | 14着 |
第96回 | 2017年 | サトノダイヤモンド | C.ルメール | 池江泰寿 | 15着 |
サトノノブレス | 川田将雅 | 池江泰寿 | 16着 | ||
第97回 | 2018年 | クリンチャー | 武豊 | 宮本博 | 17着 |
第98回 | 2019年 | キセキ | C.スミヨン | 角居勝彦 | 7着 |
ブラストワンピース | 川田将雅 | 大竹正博 | 11着 | ||
フィエールマン | C.ルメール | 手塚貴久 | 12着 | ||
第99回 | 2020年 | ディアドラ | J.スペンサー | 橋田満 | 8着 |
第100回 | 2021年 | クロノジェネシス | O.マーフィー | 斉藤崇史 | 7着 |
ディープボンド | M.バルザローナ | 大久保龍志 | 14着 | ||
第101回 | 2022年 | タイトルホルダー | 横山和生 | 栗田徹 | 11着 |
ステイフーリッシュ | C.ルメール | 矢作芳人 | 14着 | ||
ディープボンド | 川田将雅 | 大久保龍志 | 18着 | ||
ドウデュース | 武豊 | 友道康夫 | 19着 | ||
第102回 | 2023年 | スルーセブンシーズ | C.ルメール | 尾関知人 | 4着 |
第103回 | 2024年 | シンエンペラー | 坂井瑠星 | 矢作芳人 | 12着 |
※ウィキペディア参照