岩田望来「満足コメント」に残念な気も…馬場の把握が明暗分けた優駿牝馬【レース回顧】
大舞台の経験不足を露呈した岩田望来
東京11R優駿牝馬(G1)芝2400
25日、東京競馬場で開催された優駿牝馬(G1)は、先に抜け出した2番人気アルマヴェローチェを4番人気カムニャックがゴール前で捉えて優勝した。
3着に直線最後方からインをスルスルと伸びた10番人気タガノアビーが食い込んだ3連複は2万1380円、3連単は13万640円の波乱。1番人気に支持された桜花賞馬エンブロイダリーは勝負どころで伸びを欠き9着、距離延長で逆転の期待が大きかった3番人気リンクスティップも5着に終わった。
勝ったカムニャックは4番人気だったとはいえ単勝1430円。票が集中した上位3頭が3倍台で争っていたため、殊勲の大金星といえるだろう。シュタルケもこれがJRA・G1初勝利のオマケ付きである。しばらくは来日しなさそうだが、51歳になったドイツの職人も感無量の勝利騎手インタビューという感じだった。
カムニャックを所有する金子真人オーナーにとっても、JRA・G1勝利は2023年10月スプリンターズS(G1)のママコチャ以来。史上最強に持っている馬主の存在感を見せつける勝利でもあった。
恥ずかしながら筆者は気付いていなかったのだが、本馬の3代母は1995年の優駿牝馬を勝ったダンスパートナー。大好きなダンシングキイ一族ということを知っていれば、思い入れのある血統だけに消すまではしなかったかもしれない。
でも追い切りでタガノアビーに超抜の評価を抜擢した一方、カムニャックとエリカエクスプレスはピンとこなかったんだよねえ。情けない。
では早速レース回顧に移ろうと思うが、まずは勝者に敬意を表してシュタルケから。これまで見た中で一番うまいシュタルケだったなあ。
Twitterや本サイトをご覧いただいている方なら、当方が東京と京都の芝が差し馬天国になっていると話していたことを知っていると思う。まずスタートを無難に決めると後は折り合いに専念。周りがどうこうよりもカムニャックのリズムと走りを優先させている。
シュタルケって上手かったの?
出遅れだけはやめてくれと思いながらスタートを見守ったが、アルマヴェローチェが必要以上に前に位置取り、穴で期待したタガノアビーは最後方。結果的にも後方待機が現在の馬場状態にフィットした乗り方だったと思う。
実際、道中のゆとりの有無がゴール前で脚が鈍ったアルマヴェローチェとカムニャックの差として出てしまった。
デビュー時から素質の高さを評価されていたが、川田将雅が連敗後に捨てたことも人気の盲点となった。それでもフローラS(G2)で再び強さを見せたのだから、ファンが4番人気に推したのも納得できる範囲だ。
むしろ同じパターンで復活に期待したブラウンラチェットの方は、絶好調のダミアン君が騎乗するにもかかわらず6番人気に留まった。直線で同じような位置にいた2頭で明暗が分かれたが、競馬ファンの見る目は侮れない。
桜花賞とオークスで勝ち馬が異なる年は波乱の傾向にある。こうなると秋華賞(G1)も雲行きが怪しくなってきたか。
岩田望来の経験不足が顕著な敗戦
その一方、勝てたレースを騎手のミスで取りこぼした感が強いのは岩田望来とアルマヴェローチェのコンビである。
内容としては勝つための競馬をした結果、詰めが甘くなっての2着であり、こちらについては許容範囲と考えていたものの、望来の「理想のポジションを取れましたし、良いところで競馬が出来たのではないかなと。結果だけが残念でしたが、勝ち馬が強かった。また秋に巻き返したい」という コメントを見て少々疑問が残った。
コメントを取っている記者も行間までは分からなかったろうが、少なくともあれは騎手が反省すべき敗戦に映る。外野目線でも勝ちを焦った2着のため、本人も何かしら反省する言葉を出すはずだったのだが……。
この2着は「勝ち馬が強かった」で済ませていては成長できない。桜花賞の2着はまだわかるよ。それくらいモレイラが神がかっていたから。でもオークスは望来がもっとうまく乗っていれば負けなかったレース。むしろルメールなら勝っていたのではないかと思る程度にはね。
まあレース直後はファンの方が客観視可能な場合もあるから、そこまで悪く言うつもりはないけれど、こんなコメントを残しているようでは、いつまで経っても一流騎手になれないぞ。
なんかエフフォーリアがシャフリヤールに差されたダービーみたいなゴール前だったが、当時の馬場は真逆の超速前残り馬場で仕掛けを待ってしまったのが敗因。今回のは差し馬場で仕掛けが早過ぎたことが敗因なのだからね。
惜しむらくは血統的に引っ掛かる人気2頭のどちらも勝てなかったこと。それでもハービンジャーだからアルマヴェローチェは融通も利いた。これはアルマヴェローチェではなく望来が負けただけに過ぎない。
むしろこういうのってダービーでありがちなんだけど、そこは同じ東京芝2400の舞台設定。測らずも「岩田望来という騎手の現在地」が明確になった感じがする。これについては来週のクロワデュノールに騎乗する北村友一を不安視している理由と同じである。望来は進境著しいと感じることはあっても、北村友一はあまり頭を使った騎乗をしていないと感じることの方が多いからだ。
距離に泣いたルメール、馬場に泣いたデムーロ
まあアルマヴェローチェは望来がやらかしたと考えているため、次は残りの人気馬エンブロイダリー、リンクスティップについて触れる。
エンブロイダリーを怪しむ気持ちは桜花賞で軽視したのと大差はない。あれはモレイラがヤバ過ぎただけで馬自身の評価は、自分の中でそこまで高くなかった。そもそもアルマと違ってこちらは父もアドマイヤマーズで距離に限界のあるダイワメジャーの産駒。血統に関しては専門ではないものの、アドマイヤマーズ×母父クロフネに芝2400mを克服されたら、「ブラッドスポーツとは何ぞや」とあきらめるしかない。
予想記事でも触れたように1勝クラスを勝った際にルメールから「ベストは1400」という言葉も出ていたほど。やはり危なっかしいなあと思った。2000mの秋華賞でも買いたくないタイプ。おそらくマイルCS(G1)じゃないかと思う。
リンクスティップの5着については正直よくわからない。ミルコは道中でのめってしまって、この馬場は合わないと振り返っていたのだが発表は良馬場。むしろ桜花賞当時の阪神の方が馬場は悪かったようにも思う。たまに見かけるよね、良馬場でも「今の馬場が合わなかった」ってコメント。じゃあ何を信じればいんだよとなっちゃう。全盛期のミルコなら勝ってたんじゃないかのは言い過ぎか。
そして、今回の最大の注目ポイントは、ずっと言い続けていた馬場傾向を把握できていたかどうか。
実際、理に適った乗り方をした騎手が上位を独占した。
直線最後方の絶望的な位置から上がり最速33秒5をマークしたタガノアビー。勝ったカムニャックも11番手から33秒8と切れる脚があった。33秒台の切れを披露したのはこの2頭のみ。だからこそ5番手から34秒2のアルマヴェローチェが残念過ぎるという訳だ。
4着パラディレーヌにしても同じ超速馬場にしても、こちらは前残りだった中山で追い上げた2着。馬場が真逆の東京でレーゼドラマに負ける理由はなかった。
近年の東京は造園課が完全に前残りの馬場に作っていたから、どちらかというと今の方が直線の長いコースとして正しい姿にも感じる。京都にしてもそうだったけれど、あいつら急にどうしたんだろうね。
まあそれはさておきオークスの全パトはこちら。
望来はスタートだけ気を付けて直線のスペースを探す冷静さが欲しかったよね。気持ちが前に出過ぎててさ、とにかく前が塞がらないように乗ってる。最内を引いたからというのはわかるが、あまりにも芸がなかったかなあ。
以下は各騎手のコメント。
1着カムニャック シュタルケ
「ペースがそこまで流れなかったが、直線で前が空いてからすごい脚。掛かる感じもなくリラックスし、素晴らしい能力を見せた彼女に感謝したい。GIを勝つことが夢だったので、それが叶ったことは嬉しい。ダービーに騎乗するチャンスがあるかもしれないので頑張りたい」2着アルマヴェローチェ 岩田望来
「理想のポジションを取れましたし、良いところで競馬が出来たのではないかなと。結果だけが残念でしたが、勝ち馬が強かった。また秋に巻き返したい」3着タガノアビー 佑介
「スタートは遅いのもありますし真横の馬も出てきて遅れる形に。一番外か一番内かというところでした。3、4角はペースが緩んで、みんな苦しくなって外に動いたので最内に切り替えた。勝つ気で乗っていたので悔しい」4着パラディレーヌ 丹内
「折り合いも操縦性も良いです。一瞬おっ、と思いました。これからが楽しみです」5着リンクスティップ デムーロ
「スタートは出ましたが、のめってしまって全然ペースアップ出来ませんでした。向正面はすごくペースが遅く少し早めに踏んでいきました。本来なら勝つパターンでしたが、直線に向いてからも馬場が合いませんでした。能力だけで5着に来てくれました」9着エンブロイダリー ルメール
「直線に向くまで引っ掛かっていましたし、まったく落ち着いていませんでした。こういう馬場で、伸びることが出来ませんでした。他の馬が伸びた時、彼女は落ち着きました。特にこういう馬場だと、短い距離の方が良いです」
先週の回顧記事で造園課の罠に気をつけようって話した通り。テストに出ましたね。
今週の反省
点数が少ないのはアルマヴェローチェ1点に自信があったため。これ2点にするだけでも300点になる。せめてオークスの馬券は当てようと開きなおり、予想もほぼ完璧に読み切っていたつもりだったからしんどい。タガノアビーも穴として指名してたんだよなあ。
いずれにしても最後で死ぬ運命だった訳だし、東京10Rも京都11Rもアテが外れた。
なんだかんだで小生の発信を参考に的中報告を複数もらったから悪い気はしないよ。
Cコースに替わる来週のダービーでも馬場チェックを怠らないようにしたい。
タガノアビーが内から伸びたんだから内外の差はそんなにないと思うけれど、差し馬場から急に前残り馬場に戻されると厄介ですなあ。









