武豊、福永祐一も苦しんだ頂点を「わずか3回」でゲット…豪運ジョッキー誕生の裏に最大の功労者

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武豊、福永祐一も苦しんだ頂点を「わずか3回」でゲット…豪運ジョッキー誕生の裏に最大の功労者

巡り合ったこと自体が幸運だった?

東京11R東京優駿(G1)芝2400

周知の通り、今年の日本ダービー(G1)は北村友一とクロワデュノール(牡3、栗東・斉藤崇史厩舎)のコンビが優勝し、ホープフルS(G1)に続く2つ目のG1タイトルを手に入れた。

同じG1でも2歳世代限定と競馬界最高の栄誉では重みが異なる。JRAが公開したダービーのジョッキーカメラ映像でも、敗れた騎手たちが握手会のように祝福する言葉を北村友一にかけており、心温まるシーンでもあった。

歴代最多のダービー6勝を誇るレジェンド武豊でさえ、1998年スペシャルウィークで初勝利を挙げるまで9連敗を喫し、10度の挑戦で栄誉を掴んだ。そして北村友一以上に馬質に恵まれていた福永祐一にしても、挫折を経験した初騎乗のキングヘイローとの挑戦から2018年ワグネリアンの優勝まで19度の挑戦を要した。

これに対し、北村友一はたった3度の騎乗機会で優勝。通算7度目のG1制覇は割と呆気なく手に入ってしまった感も否めない。ただ改めて彼の勝利を振り返ってみると、全7勝中5勝が斉藤崇史厩舎の管理馬で挙げたもの。しかもすべてがノーザンファーム生産馬であることも大きな特徴だ。

外国人でもトップジョッキーでもなく北村友一を選んだ調教師

やはり、注目すべきはG1で常連の最大勢力の生産馬に彼が乗れたことかもしれない。

なぜならノーザンファーム系のクラブ馬は基本的にルメールや短期免許で来日する一線級の外国人騎手を起用する傾向にある。他の厩舎なら使い分けで空いた馬の騎乗機会が回ってくることはあっても、主戦を北村友一に任せるケースは相当レアケースだろう。

だが、斉藤崇史厩舎に関しては別だった。ある意味で川田将雅×中内田充正タッグのような蜜月の関係を築いているといえる。

もちろん、クロノジェネシスの阪神ジュベナイルF(G1)やクロワデュノールの皐月賞(G1)のように、C.デムーロやJ.モレイラに格の違いを見せつけられる敗戦を経験もしたが、それでも素質馬がいれば北村友一に乗せてあげようとする調教師の想いが好結果をもたらしてもいる。

正直なところ、普段の騎乗ぶりを見ていても、彼がそれほど優れた技術を持っている訳でも、考えた騎乗をしている訳でもなさそうな先入観は否定できない。ゴール後にも自身よりも馬を指差し、レース後のコメントでも「ダービージョッキーになったことよりクロワデュノールがダービー馬になれたことが何よりも嬉しい」と話したことに偽りはないだろう。

そして、もしクロワデュノールが斉藤崇史厩舎以外に預託されていたなら、北村友一が乗せてもらえた可能性は限りなくゼロだったことも察しが付くのだ。

その一方、こうしてダービーを勝ったからこそ、未熟さを露呈した皐月賞の敗戦が悔やまれるという話も再浮上してくる。

あのレースはモレイラの卓越した技術が他騎手を圧倒。ファウストラーゼンのマクりもあれば、複数の馬が不利を受けるアクシデントもあり、道中の進路取りや仕掛けのタイミングなども非常に判断が難しかったはず。両レースを振り返ってみても、皐月賞の方が篩(ふるい)にかけられる乗り難しいレースだった。

皐月賞と難易度が違ったダービー

対するダービーは条件が何もかも好転した。

まずひとつにファウストラーゼンが何もしなかったどころか、道中でまったくといっていいほど動きも少なかった。

さらに馬場造園課のバックアップも大きく、差しの決まる馬場だった1週前のオークスから一転して前が残る超速馬場へと作り替えられていたことだ。改めて同日の芝2400m戦の2つを見比べてみたい。

たかが2勝クラスの青嵐賞の勝ちタイムと最高峰のダービーで勝ちタイムに0秒1しか差がついていない。しかも1000m通過のラップにしても前者が59秒8、後者が60秒0と0秒2も遅い。さらに酷かったのは、この数字ですら後続を離して逃げたホウオウアートマンが刻んだもの。2番手を走ったサトノシャイニングは、おそらく1秒以上遅れて通過していた。

既にこの時点で超がつくスローな訳で、レースレベルとしては高い評価が出来ない。表現を憚らずに言ってしまえば、「ただのクソスローのクソ前残り」なのだ。

これがまだ先週までの差し馬場なら、スローでも差しが決まる可能性もあったが、例の如くCコースに切り替わったことにより、今度は差し馬が届かない馬場でレースが行われた。これが好位につけていたショウヘイが好走できた背景でもあるだろう。

また、別の視点でも話をすれば、武豊の存在がこの展開を生み出したといっていいかもしれない。大外8枠18番の枠を考慮した奇策だったろうが、田辺のホウオウアートマンを先に行かせて後続に蓋をする格好。これにより出入りの激しかった皐月賞とは真逆の、動きがほぼ何もないレースを決定づけた。

だったらもう、これまでスローの瞬発力勝負で圧倒的強さを見せたクロワデュノールに願ってもない展開。最も強いと目された馬が何のリスクもなく直線3番手の強気なレースを演じることができるからだ。当方の思い入れが強過ぎることは重々承知の上でも、3/4馬身差2着のマスカレードボールが力負けをした訳ではないことを主張したい根拠でもある。

かといって勝者を貶めるつもりもない。敗れた坂井瑠星にしても内心は穏やかでなかったにせよ「勝った馬は強かったです」と潔いコメントを出した。コメントに注目していた自分もこちらについては「清々しい兄ちゃんやなあ」と感心した。

ブレない主戦が勝利を呼び込む

結論としては、皐月賞の敗因に北村友一が無関係ではなかったものの、ダービーの勝利は北村友一によるものだったと思う。

これで下手に考えてしまう騎手なら、早めに動いた前走の苦い経験を考えて一列二列くらい後ろの位置で競馬をした可能性がある。そういうリスクを抜きにしてパートナーの勝ちパターンを貫いたからこそマスカレードボールに交わされなかったはずだ。

別の要素としても武豊の逃げが超スローの前残り展開を呼び込んだし、「余計なこと」をする人馬が今回はいなかった。そもそもクロワデュノールが強い馬であることも間違いない。

最後に個人的な話をさせてもらうと、昨秋のアイビーS(L)を圧勝したマスカレードボールと東京スポーツ杯2歳S(G2)を制したクロワデュノールに同等の評価をしていたことは、割としっかり見れていたのかなと自信が持てた。

まあ残念ながら直接対決の成績では、ホープフル、皐月賞、ダービーで「3戦全敗」となってしまったものの、返し馬から暴走、武史が致命的な不利、超スローで泣いたように、どれもこれも力負けしたレースではない。ひとまずこの世代の最強2頭という認識だ。

ミュージアムマイルは割と悩ましい。後ろにいたエリキングに交わされた点も位置取りだけを敗因といえないし、皐月賞はモレイラがすべてといえそうな一発。それに加えて距離適性もまだはっきりしない雰囲気がある。

色々と話したが、他人の不幸を悉くプラスに変換してきたガシマンの豪運を北村友一の強運が凌いだダービーだったという話。「最も運がある馬が勝つ」だけでなく「最も運があった人馬」に勝利の女神が微笑んだ、そんな今年のダービーだった。