■京都10R令月S(OP)ダ1200
西村淳也が騎乗した3番人気ロードアウォードが、2着インユアパレスに2馬身半の差をつける貫録勝ち。過去には川田とのコンビでWIN5対象レースを2勝している実力馬だが、元主戦を返り討ちにする会心の結果となった。
西村が「ゲートを出てから速かった」「終始手応えもよかった」と振り返ったように、スタートしてすぐサウンドアレグリアの2番手をキープ。直線で上がってきたインユアパレスの追撃を寄せ付けずに振り切った。テンのスピードを要求される中山ダ1200で好走しただけに、33秒3で流れた前走と35秒2で流れた今回では追走しやすかっただろう。これなら重賞でも通用する感じだ。
勝ち馬には完敗を喫したものの、インユアパレスも強さを感じる内容。ただこの馬はメンバー最高の京都巧者でもある。カペラS(G3)で不甲斐なかった割に1番人気の支持は川田人気と京都適性が評価された理由か。次走も京都なら軸として最適かもしれないが、他のコースで走るようならアテにしづらいかもしれない。
「勝った馬が強かった」と力の差を認めた川田だが、捨てた馬に負けたのは興味深い。どうも川田の場合、選んだ馬が一番強いのかというのは疑問がある。乗るだけで人気が先行する騎手でもあり、川田リターンは今後も一考の余地がありそう。
前後半は稍重のダートで35秒2-36秒0と先行有利の流れ。3着イスラアネーロは川又君も巧く乗ったし、4着エティエンヌも団野がハナ差と悪くない内容。同じロードでも8着ロードフロンティアは度外視していい。今回はスタートで痛恨の出遅れ。逃げてなんぼのガシマンが後ろからの競馬では出番がなかったのも無理はない。
★次走注目馬
ロードアウォード…上昇著しい
エティエンヌ…前が速くなる展開の助けが欲しい
ロードフロンティア…本来は前で競馬ができる馬
■東京10R初音S(3勝)芝1800
前走で12キロ減っていた馬体重をそのまま戻したカナテープが快勝。元々評価の高かった馬ながら、23年10月に3勝クラスに昇級してから惜敗続きで7連敗と伸び悩んでいた。その間も惜しい競馬はしても直線で交わされるか前の馬を捕まえ切れないシーンが多々。どうにも勝ち切れないイメージがついて回った。
今回は少しぶりに陣営も状態の良さを強調。堀宣行厩舎が勝負レースで起用するキングを乗せてきた。作戦もズバリ決まって鞍上が見事なレースぶりで久々に勝利の美酒に酔った。ただまあ、キングの手綱捌きがえげつない。
7枠13番の外枠で1馬身ほど出遅れた馬をロスのないインへ導き、少し前にアドマイヤマツリがいるポジション。直線まで脚を溜め、少しだけ外に持ち出して進路を確保した。ちょうど馬場の真ん中あたりのいいところから抜群の手応えで追い出し。パートナーの脚を完全に使い切って2着馬の追撃を凌いだ。簡単そうに見えて技術がなければ出来ない騎乗だと思う。
これに対し、1番人気アドマイヤマツリの戸崎圭太は終始窮屈なポジション。直線に入ってなんとか進路を確保したものの、すでにライバルはトップスピードに乗った状態である。一足先に抜け出した相手と差を詰めたように脚はまだ残っていた。結果論とはいえ、馬だけではなく鞍上の技術で差がついたレースだったように映る。
その点、3着キュクヌスのルメールもまたキングと同じく見事な騎乗だった。前半1000m通過58秒2はハイペースに思えても飛ばしていたのは後続を離して逃げたビジュノワールのみ。道中で2番手以降は早くないと見極めるやいなやポジションを押し上げていた。ゴール前で力尽きて3着に敗れはしたが、こちらも力を余すところなく引き出したファインプレイだ。馬の強さに助けられて2着に上がった戸崎とキングやルメールの間には、かなりの差があったはずである。
それは各騎手のコメントでも歴然。キングは「最後まで集中していたようにいい勝ち方」、ルメールは「いいポジションを取って、この馬の精一杯の走りができた」とやりきった表現をしている一方で、戸崎は「思い描いていた通りに運べました」「いい感じでレースが出来た」とむしろ納得している状況。言ってしまえば自分に対する満足度のレベルが低いのだ。
勝てる騎手と勝てない騎手の意識の違いがこれだ。仮定の話をしても仕方がないが、もし戸崎がカナテープやキュクヌスに乗っていたらほぼ間違いなく着順が下がっただろう。そしてアドマイヤマツリにキングやルメールが乗っていれば、普通に勝っていたとも思う。
この漠然とした向上心のなさや合格点の低さが、肝心なところで仕事のできない人間を象徴するかのよう。馬よりも戸崎がキングとルメールに負けたという感想しか残らなかった。
武豊ラファドラは26キロ増と明らかに太目残りだった割に0秒2差の4着なら好走。牝馬限定戦なら次走で前進に期待出来そう。前走の嵯峨野S(3勝・芝1800)でカナテープとクビ差だったライトバックは、出遅れて後方から見せ場なく12着。それでも馬が強ければ着順はともかく上がり最速をマークするくらいじゃないと厳しい。桜花賞(G1)、オークス(G1)で3着の実績が人気しても、前走の負け過ぎ感は今回でも同じ。復活にはもう少し時間を要する凡走だった。
アドマイヤマツリとライトバックの2頭に票が集中した結果、3番人気が勝ってもシェアは8.8%と高配トリガーになった。1番人気と2番人気で58.7%も占めていたのだから、大半のファンが勝つのは2頭のうちどちらかと考えた訳だ。それだけに春天のブライアンとトップガンの二強を崩した3番人気サクラローレルのような一発。キング、やべえよキングと唸った次のレースでまさかの結末も……。
★次走注目馬
アドマイヤマツリ…外人不在なら戸崎でも勝てる
ラファドラ…馬券圏内期待大
キュクヌス…ルメール継続が好走条件
■小倉11R小倉日経賞(OP)芝2000
長期休養明けだった前走のオクトーバーS(L)を2番人気で11着に大敗したドゥラドーレスが一度使われて一変。力の違いを見せつける圧勝を演じた。着差こそ2着シルトホルンと3/4馬身であるが、何度やり直しても入れ替わることはなかっただろう。
レースはハナを主張したウインシュクランがマイペースの逃げを打って1000m通過62秒0のスローペースで流れた。これを番手で追走するホウオウプロサンゲにとっては絶好の展開にも映ったが、逆に逃げた馬を捕まえられずに3馬身半差の完敗ではどうしようもない。
シルトホルンも不安要素の大野君が乗った割に外々をスムーズに進出して勝ち負け必至の展開まで持ち込んだ。毎日王冠(G2)5着や秋天(G1)15着でもオープンの相手なら、力を出し切れさえすれば足りる。
ただ、今回はさすがに相手が悪過ぎた。まだ本調子になかったとはいえ、ドゥラドーレスは菊花賞(G1)4着の素材。妹にレガレイラのいる良血は再浮上に期待出来るだろう。道中でスローペースに掛かるシーンも見られ、折り合いに不安を残す中での勝利。これには杉原君も「ペースが遅かったが我慢が利いた」「いいときに乗せてもらえた」と手応えあり。乗れている彼なら継続騎乗でも期待したい。
それにしてもホウオウプロサンゲはだらしがない。スロ専の馬は展開がハマる追い風がないと脆いもの。リカンカブールにしてもギャラクシーナイトにしても展開ありきで自分の力で勝てない感じだ。
★次走の注目馬
ドゥラドーレス…G3程度ならすぐ勝てるのでは?