鮫島克駿「叩かれ過ぎ問題」と「騎手批判するな」…避けて通れないテーマに温度差

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鮫島克駿「叩かれ過ぎ問題」と「騎手批判するな」…避けて通れないテーマに温度差

ジャスティンパレスの騎乗についてSNSは大荒れ

天皇賞・春(G1)芝3200

5日の日曜京都で行われた天皇賞・春(G1)は、今週末から短期免許で来日しているD.レーンが見事な手綱捌きでヘデントールを初G1勝利へ導いた。アタマ差の2着に惜敗したビザンチンドリームに騎乗していたA.シュタルケも短期免許の外国人騎手。ショウナンラプンタで3着に入った武豊が意地を見せたが、これで上半期に開催されたG1は外国人騎手が5勝、日本人騎手が1勝と差が広がった。

一部では外国人騎手ばかりが、いい馬に乗っているという声も出ているものの、「なぜそうなっているのか」の理由はひとつ。彼らが「結果を出している」からだ。こちらについてはかつての武豊も「依頼されることが実力の証」のニュアンスで話したこともあり、概ね間違いではないだろう。

勝てる騎手には理由がある

同じ外国人騎手でも結果を残せないものは呼ばれなくなり、結果を残せば再び呼ばれて騎乗馬の質も上がる。

男勝りの騎乗で話題になったR.キングにしても、当初はそこまで騎乗馬に恵まれていた訳ではない。フェブラリーS(G1)の勝利も彼女が実力で信頼を勝ち取った結果、有力馬の陣営から依頼があったに過ぎない。復帰の待たれるB.ムルザバエフにしても同様だったはずである。

実際、天皇賞・春のレーンは最初から最後まで隙のないポジション取り。絶好のスタートを決めると行き過ぎず溜め過ぎずの先行勢を見ながら、距離のロスが少ないインの経済コースを早めにキープしている。

しかし、ただずっと内にこだわる訳でもなく坂の上り(2000m付近)で徐々に進路を外に採り、勝負どころの進路取りを見据えていた点もさすがだ。残り600m過ぎに隊列が慌ただしくなると、ワンテンポ待ってスペースを確保した直線で外に出す。これにより芝3200mの長丁場で必要最低限のロスでゴーサインを出すことに成功した。

ビザンチンドリームのシュタルケも後方からスルスルと進出して勝ち馬のすぐ後ろ。こちらもシュタルケらしからぬ好騎乗だったが、相手がレーンだったのが不運。勝ち馬に乗っていたのが他の騎手ならビザンチンドリームが勝っていた可能性が高そうだ。

鮫島克駿の騎乗を疑問視する声も

その一方、好騎乗でワンツーフィニッシュを決めた外国人騎手2人に対し、レース後にSNSで物議を醸したのがジャスティンパレスに騎乗していた鮫島克駿の判断についてだ。

一般的に淀の長距離は2周目の坂をゆっくり上ってゆっくり下りるのが昔からの常識にもかかわらず、上り坂でマクるように加速していたからである。「12→12→3→3」のコーナー通過順位が示す通り、一気にポジションを上げたはいいが、直線で脚が止まっての6着。競馬ファンでさえ知っている”非常識な判断”を、プロの騎手がやってしまったのだから、これを糾弾する声が出たのも無理はなかったか。

当方も「あそこで動いちゃうのが克駿」とこぼしたが、SNSで思いのほか攻撃的な意見が飛び交っていたのは少々驚いた。パートナーは2年前の優勝馬でもあり、条件的に鮫島克駿に初G1勝ちのチャンスがあった舞台。期待の裏返しもあってか怒りの感情を隠さない批判も多かったように思う。

ちなみに克駿のコメントは以下。

「外枠でスタートが決まらず、難しいレースになりました。そこからリズムを整えながら追走して、4コーナーで勝負圏内に、と考え、向正面で無理せず押し上げてという競馬でした。多くの方の支持に応えられず、申し訳なかったです」

向正面で「無理せず押し上げて」という言葉に違和感はあるが、本人も反省はしている様子。G1を勝てない現実も見え隠れする騎乗に残念な気持ちが生まれたのも確かだ。ジャスティンパレスの馬券を買っていたファンなら多少の怒りをぶつけても許されるかもしれない。

また、個人的には今開催の京都がスローペースでも後ろからの差し馬が間に合う馬場と読んでいたため、シュタルケが乗っても何とかなるとビザンチンドリームに期待した事情もある。だからこそあのタイミングで動くのは悪手。この手の高速馬場でマクりが利かないこともクッション値が10を超えていた中山の皐月賞(G1)で確認していた。

当日の京都も「10.6」の異常な馬場コンディション。トータルで考えてもやはり「騎乗ミス」という批判に納得はいく。

だが、人格の否定や行き過ぎた罵詈雑言などの誹謗中傷までしてしまうのは違う。この失敗を糧にして今後の騎乗に生かして欲しいと見守る気持ちも忘れてはならないだろう。

競馬ってそんな綺麗なものだったか?

かといって、騎手でもない素人がプロの仕事にケチをつけるなという的外れの意見が毎回出てくるのは、さすがにどうかという想いもある。

今でこそ綺麗なイメージが表に出ているが、公営ギャンブルというのは身銭を賭けて騎手や馬に託すもの。某擬人化アニメやゲームで過度に美化されたものと混同し、競馬というギャンブルの上っ面だけ見て「お馬さん可哀想」「騎手はみんな頑張ってるから叩くな」のようにエスカレートしてしまう。

そういった感情も理解はできるが、そもそも我々の見えないところで人知れず処分されている馬も多い。騎手にしても誰が乗ったかで着順に直接的な関係がある。綺麗ごとばかり言っていると競馬そのものの存在自体が危うくなりかねない。

当方のスタンスとしては、「騎手批判(常識の範囲内で)」はあって当然と考えているし、騎手の騎乗に文句を言う人間は馬券が下手くそというレッテル貼りもどうかと思う。人によっては見当違いなことを言っているケースもない訳ではないのだから、すべてがそうではないことは分かる。

とにかくこのテーマは放火されやすいし難しいよね。炎上を恐れずに個人の考えを述べると、怒ってる人たちだって本気だから怒ってるんじゃないかなと。

馬券は自己責任ってのを承知した上でだけど、同じ馬券を買っても100円と1万円や10万円じゃ感情の起伏も大きくなるだろうしさ。今回叩いている人たちだっていつも叩いてる訳じゃない。好騎乗を見れば「神騎乗」「上手過ぎる」って手の平を返すはず。競馬民って昔っからそんなもんよ。