横山典弘「やっと復活」トップナイフで会心騎乗…敗れた騎手も驚いた札幌記念のマジック

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横山典弘「やっと復活」トップナイフで会心騎乗…敗れた騎手も驚いた札幌記念のマジック

そこにシビれる!あこがれるゥ! 

札幌11R札幌記念(G2)芝2000

17日の札幌競馬場では夏競馬恒例のスーパーG2・第61回札幌記念(G2)が開催。フルゲート16頭の激戦を制したのは、10番人気の大穴トップナイフ(牡5、栗東・昆貢厩舎)だった。

意表を突く復活で大金星を挙げた横山典弘は、自身が持つJRA最年長重賞記録(24年7月中京記念・アルナシーム、56歳4ヶ月29日)を更新する57歳5ヶ月26日での勝利。10-2-13番人気で決着した3連単の払戻しは130万7650円の大波乱となった。

この勝利で現在JRAにおける最年長重賞記録とG1記録の両方とも横山典弘が所持。今年の宝塚記念(G1)を制した武豊(56歳92日)は、わずか1日の差(横山典弘56歳93日)で2位だが、これは宝塚記念が前倒しとなった影響もある。

「例年よりもレベルが低い」「唯一のG1馬ステレンボッシュも春に惨敗続き」

そんな声もチラホラ見掛けた札幌記念だが、衰え知らずの名手が競馬ファンを唸らせるには十分過ぎる好騎乗で魅せた。

レース直後は、単純に横山典弘が重賞を勝った驚きと喜びが大きかったものの、一息ついて全パトの映像を見直してみると、その熟練の手綱捌きにもう一度驚かされる。

5枠9番から好発を決めたトップナイフだが、各馬がポジション取りで慌ただしい中。まずは馬の気分を優先して余計な指示は出さない。差しやマクリで好走していた馬も多く、外の進路を取る選択肢もあったはずだが、横山典弘は微動だにせず内を意識していたようだ。

結論としては早過ぎるが、勝敗の決め手となったのは2枠4番の内から外に出そうとしたコスモキュランダを先に行かせたシーン。結果的にこれが決定打となった。

他の騎手が外を回したのに対し、ガラ空きのインで進路の確保に成功。馬群のポケットで悠々自適な一人旅を成功させていたのだ。

写真を見ても一目瞭然。道中のラップが緩むタイミングはなかったものの、3コーナーまでに早くも5番手まで進出した。勿論、コーナーワークで最短距離を通れるため、他馬に比べて伸び伸びとポジションを押し上げていた。

最終コーナー手前で既に3番手を確保し、パートナーの手応えも抜群。ここまでくればもう後は直線で進路が空くがどうか。

内で粘るケイアイセナを競り落として先頭に立つと、外から猛然と追い込んできた2着ココナッツブラウン、3着アラタの追撃を振り切ってゴール。会心の騎乗にガッツポーズも飛び出した。

なんとまあ、あまりにも華麗過ぎる横山マジックだろうか。

この乗り方はもはや「インマクリ」といっていい。競馬を見ていると年に数回、騎手の腕に唸らされることがあるのだが、間違いなくこの札幌記念も熟練の手綱捌きに酔いしれるには十分な神騎乗だったといえよう。

特に印象的だったのは、勝利騎手インタビューで横山典弘が満面の笑みで喜びを表現したこと。普段はそっけないコメントしか残さない人にしては、ここまで饒舌な姿は珍しい。それもひとえにパートナーへの期待、調教師を諦めた自身を関西へ導いてくれた昆貢調教師、厩務員などチーム一丸となっての「ハッピーセット」といったところか。

トップナイフの名を聞いて真っ先に思い浮かぶのは、2歳時に参戦したホープフルS(G1)の2着だろう。まんまとマイペースに持ち込んで勝利寸前のところまで行きながら、2番手につけていたドゥラエレーデの前にハナ差の惜敗。クラシック候補といわれた3歳時代に結果は出なかったが、2年前の札幌記念でプログノーシスの2着に入ってファンを驚かせた。

だが、その後は試行錯誤の繰り返しが続く日々。今回の復活劇に繋がったのは、インタビューの中で横山典弘が触れていた「色々馬体に故障が発生したりしてなかなか結果が出なかった」ことかもしれない。本人曰く「膝蓋の手術でスタートがちゃんと出るようになった」らしい。

※膝蓋とはいわゆる「膝のお皿」のこと。詳しくは中日スポーツさんの記事で説明されているのでご覧いただければ幸い。

実際、手術の効果はあったようで、3走前のアンドロメダS(L)はお約束の「後方ポツン」で3着に入った一方、前々走のエプソムC(G3)や前走の函館記念(G3)は”普通の競馬”ができていた。おそらく手術に踏み切ったのはエプソムC前の空白期間といったところか。

それでも着順自体は11番人気11着、4番人気10着とレースだけを見ているファンにはなかなか伝わらないものである。今回の追い切りは悪くない内容だったにせよ、ここまでの激変、いや豹変を予見できた人間は多くなかったはずだ。

そんなファンの先入観とは裏腹に横山典弘は「返し馬がいままでで一番よかった」「本当にね、これからだと思います」「軌道に乗れば大きなところで大きな花が咲かせられる」と喜びを隠せなかった。

かといって今回の勝利が馬の力だけで成立したことではないのも確か。2着馬とは1馬身差だった上、最短距離を走ったお釣りも最後の手応えに直結した。もし他の騎手が手綱を取っていたなら、ここまで華麗な復活劇はなかったようにも感じる。

ひとことひとこと感慨に耽りながらインタビュアーの質問に答える姿も、サラブレッドという儚い経済動物、生涯騎手を選んだ名手の美学が伝わってくるもの。スポーツマンは加齢とともに肉体の衰えが顕著になるが、「走るのは馬」だからこそ長く続けられる職業でもある。

秋にもまた横山典弘の騎乗にハラハラドキドキさせられるのだろう。癖が強過ぎる変人の生きざまをまだまだ見られそうな我々競馬ファンも幸せだ。

コメント

1着トップナイフ 横山典弘
「とてもうれしいです。いつも勝つとうれしいですが、特にこの馬とは若馬の時からずっと付き合っていて、故障があったりしてなかなか結果が出なかったのですが、やっと復活してくれて、とてもうれしいです。道中は楽に来ることができて、最後は進路さえ開いていれば突き抜ける感じでした。うまく誘導できて良かったと思います。これまで運の無いところもありましたので、これからだと思います」

2着ココナッツブラウン 北村友一
「今日は外を回りながらでもしっかり脚を使ってくれました。やはり能力があるなと改めて感じました。勝ち馬の立ち回りが素晴らしかったです。それに尽きると思います」

※勝ち馬の立ち回り、これは本当にそう

3着アラタ 浜中俊
「返し馬で状態がいいと感じました。馬場適性もあると思ったので一発を狙って乗りました」

4着ケイアイセナ 吉田隼人
「行く馬がいたので2番手から。しかし、この形ではハミが抜けなくて、最後に甘くなってしまいました」

5着ヴェローチェエラ 佐々木大輔
「ゲートを出て挟まれたのが痛かったです。行き脚がつきませんでした。勝ち馬のように内からという選択肢はありませんでした。外しか見ていませんでした」

※大輔君も乗れているけど、典とは引き出しと経験値の差。まだまだこれから伸びるはず

7着同着シュトルーヴェ キング
「良いスタート、いいリズムで道中回ってこられました。最後の直線手前でペースアップした時に、エンジンのかかるのに時間がかかる所はありましたが、最後の200mは良い脚でした。小回りで凄くいい競馬をしてくれました」

※短期免許ラストウィークで期待したがもうひとつ。来日初週に重賞で穴を出しているので次回まで覚えておきたい

12着ハヤテノフクノスケ 横山和生
「スタートも上手に出ましたし、イメージしていた所を取れました。最後に伸び切れなかった所を見ると、追い込むような競馬をしたほうが良いのかもしれません」

15着ステレンボッシュ 池添謙一
「前進気勢もありました。ペースも悪くなかったのですが、動き切れていないということは、現状としてはメンタルとしか言いようがないでしょうか」

※謙ちゃんが芝2000mを苦手にしているのは確かだが、戦前に懸念されていた通り、肉体よりメンタルに原因がありそう。ただでさえ調子の落ちた牝馬は復活に時間を要するだけでなく、プツリと糸が切れるように走らなくなるエピファネイア産駒の症状も。これは深刻だろう