武豊「勿体ないレース」でまた2着…CBC賞は「33秒4」で上がった佐々木大輔と明暗
明暗分けた両者の決断
中京07RCBC賞(G3)芝1200
日曜中京のメインレースCBC賞(G3)は、17番枠からハナを奪った佐々木大輔の5番人気インビンシブルパパ(牡4、美浦・伊藤大士厩舎)が見事な逃げ切り勝ち。それまでのダートから初芝に転じた函館スプリントS(G3)でいきなり4着に好走していたが、2戦目の芝でいきなり重賞初制覇を成し遂げた。
この勝利は、デビュー4年目の若手とは思えない肝の据わった騎乗を披露した佐々木大輔のお手柄だろう。同騎手は前日に土曜札幌メインのエルムS(G3)を5番人気ペリエールで制したばかり。勢いそのまま土日で重賞連覇をやってのけたのだから、騎手買いで狙えるレベルも十分にクリアしたといえる。
彼の素晴らしかった点は、その柔軟性だ。逃げ馬というのは迷いのない騎乗ができるとともに、ペースと展開に左右されやすいデメリットも含んでいるため、逃げだけにこだわると一本調子の馬になってしまうリスクがある。先週のアイビスサマーダッシュ(G3)で脚質のモデルチェンジに成功したピューロマジックにしても、これを意識しての決断だったはずである。
それでもレース展開は馬場はいつも同じではない。レース後のコメントで「先生とはハナにはこだわらなくていいと話していたのですが、出方を見ながら速かったので行きました」と振り返っていた通り、佐々木も調教師の指示に縛られない選択をした。
結果的にこれが最大の決め手となり、距離のロスを避けられない外枠からの競馬もインを取り切ることによってメリットに変えてしまった。
映像的に前が飛ばしているように見えても、その実前後半3Fのラップ構成は、なんと34秒0-33秒4という後傾0秒6のスローペース。先頭を走っている馬に33秒4で上がられたのでは、後ろの馬がいくら切れる脚を使っても間に合わなかったことに合点がいく。
佐々木大輔の重賞勝ち
24年7月函館2歳S(G3) サトノカルナバル(1番人気)
24年8月札幌2歳S(G3) マジックサンズ(3番人気)
24年10月サウジRC(G3)アルテヴェローチェ(2番人気)
25年6月函館記念(G3) ヴェローチェエラ(10番人気)
25年8月エルムS(G3) ペリエール(5番人気)
25年8月CBC賞(G3) インビンシブルパパ(2番人気)
春秋の大舞台は馬質が追いついていないものの、若手にもチャンスのある夏競馬で結果を残した。単純に人気馬だけでなく、穴馬も見事な手綱捌きで勝利へと導いている。
彼の特徴については、また別記事でまとめてみたいと思う。
話をCBC賞に戻すと、勝った佐々木大輔以外の騎手には悔いが残ったかもしれない。
まず、惜しくも半馬身差の2着に敗れた武豊だが、最初から最後まで中途半端な乗り方になってしまったように映る。
レース映像を見ても分かるように道中で何度か手綱を引くシーン。おそらく先行争いに巻き込まれたくなかったのだろうが、逃げた馬がスローに落としており、追い掛けるべきだったタイミングでポジションを悪くしてしまった。
道中でスムーズさを欠いたことについて、土曜に4600勝の偉業を達成した名手は「3角手前でゴチャついて折り合いを欠いてしまいました。もったいないレースになってしまいました」と悔やんでいたのだが、おそらくこれが引いたシーンのことだったかもしれない。
かといって、こんな話はレース結果を知っているから言っているだけ。乗っている側はリアルタイムで秒単位での試行錯誤。武豊の騎乗ミスというには大袈裟だ。今日のところは佐々木大輔にしてやられたというよりない。
あと、個人的に引っ掛かったのは3着シュトラウスと4着ドロップオブライトの2頭。前者は2歳時に東京スポーツ杯2歳S(G2)を制したこともある元クラシック候補だが、強過ぎる前進気勢が出世の妨げとなっていた。
これまでのキャリアでいったり下げたりとどっちつかずの競馬をしていたが、折り合いの楽になる1200mに舵を取ったのはよかった。残念ながら前残りのレースとなったため、3着に敗れてしまったものの、この乗り方で安定するようなら先は明るい。
心配なのはむしろ杉原誠人のコメントの方。「馬の能力に驚かされました」はいいのだが、ペースが緩い中で我慢させながら走ってくれました」と折り合いに全力。「課題を克服して距離を延ばしていければと思います」というのは元も子もない気がした。
まだ4歳で若い馬だが、ここまで来たらスプリント一本で落ち着いた方がいいのではないか。切れる脚が使えるのも分かったのだから。
また、4着に敗れたドロップオブライトについても松若風馬が勿体ない乗り方。17頭立ての直線16番手でまとめて差し切れる馬ではない。本馬は昨年の同レースを幸英明の手綱で制した馬だ。前日の落馬で主戦から乗り替わったことが敗因のひとつといえる。
1番人気で12着に大敗したヤマニンアルリフラについては、使える脚に限界もあったのではないかとも思う。前走の北九州記念(G3)は激流の中で差し切ったが、CBC賞はスローペースで流れなかった。団野も「もっと脚を使えると思ったんですけどね」「もう少し流れに乗せていく方が良かったのかもしれません」と腑に落ちないコメントを残している。
個人馬主の馬でもあり、秋のG1より夏だけを見据えた使い方のように思えたため、狙うタイミングならここが最後と期待していたのだが、どんな展開でも勝ち負けができるほどの強さはなかったということ。
あとは差し馬場っぽいと感じていた中京の馬場が、いつも通りの前残りにシフトしつつあったことも大きい。土曜中京はあまりチェックしていなかったのだが、こうして確認するとほぼ完全に前残り馬場となっていた様子。前に行きすぎてもゴール前で交わされるパターンを警戒していただけに、こちらの完全な確認漏れである。
前残り馬場なら例年通り逃げ馬が勝てるパターンのCBC賞。それで逃げる可能性のあったインビンシブルパパを割り引いたのは痛恨のミスだったと反省するしかない。



