カランダガンはなぜジャパンCを勝てたのか…日本馬苦戦の凱旋門賞にもシンプルな共通点

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カランダガンはなぜジャパンCを勝てたのか…日本馬苦戦の凱旋門賞にもシンプルな共通点

凱旋門賞も攻略法は同じ

東京12RジャパンC(G1)芝2400

先日の記事で暮れの有馬記念(G1)まで再び休刊すると説明していたのだが、競馬ライターとしてどうしても触れておきたい情報を目にしたため、こうして筆を執った次第。

テーマはもちろん、今年のジャパンC(G1)についてである。

レース結果は周知の通り、名手バルザローナに導かれた4番人気カランダガンが外国馬として20年ぶりの優勝。2004年アルカセットを最後に19年続いた負の歴史に終止符を打った。

2分20秒3良の勝ちタイムは、数十年破られることがないと思えたアーモンドアイの世界レコード(2分20秒6良/18年)を0秒3も上回るスーパーレコード。普段から高速馬場を走っている日本馬ならまだしも、パワーとスタミナを要する欧州で好成績を残すフランスの馬がマークしたことに驚きを隠せなかった。

「一体何が起こったんだ?」

おそらく大多数のファンも私と同じ衝撃を受けただろう。

ただ、”この事件”が単純に偶然の賜物だったのかと考えた場合、「意外とそうでもなかった可能性」も浮上した。

というのも、『スポーツニッポン』さんが掲載した「【ジャパンC】カランダガンが20年ぶり外国馬V 欧州最強馬招致実現させたJRA国際部」という記事を目にしたからだ。

詳細についてはリンク先をご参照いただきたいのだが、そこには「JRA国際部の職員たち」による水面下の根回し()について紹介。記事によると、彼らはカランダガンを日本に連れてくるため、陣営と密にコンタクトを取り続けたようだ。

当初はオーナーサイドも「最初は本当に日本に行くことなどできるのかと思っていた」らしいが、「事前に申請した飼料の輸入許可、チャーター輸送便の手配など、細やかなアプローチで来日の魅力をアピール」が奏功。その結果、「世界最強馬」のジャパンC優勝をもたらした。

22年には府中に国際厩舎を設置することにより、検疫を千葉県の競馬学校ではなく、競馬場で行えるようにして来日のハードルも下げた。こういった布石も”20年ぶりの快挙”へと繋がったのだろう。

なぜ彼らがそうまでして必死に動いたのか。

こちらに関しては至極当然のこと。何しろ6年前の2019年にジャパンC史上初となる「外国馬ゼロ」という大事件が勃発したからだ。

この年の天皇賞・秋(G1)はアーモンドアイが優勝したものの、同馬はジャパンCではなく有馬記念への出走を表明。日本最強馬の不出走はレースレベルの低下を表面化し、外国馬の参戦がなかったことも大いに危機感を増した。

それは競馬ファンだけでなく、情報を発信している我々メディア側でも懸念したほど。当時は「なぜジャパンCがここまで嫌われるのか」をテーマに記事を数本書いた記憶が残っている。

かといって、たとえ水面下でJRA国際部が現状打破(裏工作)に尽力していたとしても、そんなことは表で大々的に情報が流れでもしなければわからない。

一応、今年のジャパンCでカランダガンのことを「これまでとは本気度が違う」と警戒する記事も出ていたはずだが、さすがに19年も勝てなかった歴史を目撃してきたファンは、「どうせいつものネタ」くらいにしか思わなかったはずである。

恥ずかしながら当方も「その中のひとり」に過ぎなかった。三国志の戦略なんかでも、飲んで騒いで相手の油断を誘い、隙ありとばかりに攻め込んできた敵を伏兵で殲滅するシーンを見たことがある。日本なら島津の釣り野伏のイメージだろうか。こんな脱線をしていたらキリがないので自重する。

表に出回っている情報でもサインはあった?

あくまで「カランダガンによる20年ぶり外国馬V」だけでは、終わってからそんな裏事情の話をされたところで、どうしようもない。後付けでいくらでも話せるでしょとなるのだが、そこは少し冷静になって、「気付けたかもしれないポイント」についても触れておきたい。

まずひとつは、当サイトのジャパンC展望記事で、私が少し違和感を覚えていた点だ。

それは、戦績紹介の次に書いた「招待された4頭(カランダガン、ゴリアット、ロスアンゼルス、クイーンズタウン)のうち、3頭が来日を取りやめてカランダガンのみ参戦。昨年出走したゴリアットの回避は残念だが、どうもこれ調教師が同じっぽいんだよなあ。どちらもキングジョージ6世&QESを勝っているけれど、日本の馬場適性が怪しかったゴリアットよりはカランダガンを優先する考えは分かる」この部分だ。

昨年のジャパンCを大いに盛り上げてくれたゴリアットが参戦する可能性が高いと感じていたにもかかわらず回避。それだけならまだしも本馬を管理するF.グラファール調教師はカランダガンと同じ人物。つまり、現在の日本の馬場ならゴリアット<カランダガンと考えていた可能性が十分にあった。

それを踏まえた上で昨年のジャパンCの結果を見てみよう。

特筆すべきは2分26秒0の走破タイムよりも上がりの数字。大外を無人の荒野の如く馬なりで上がっていったドウデュースはともかく、ゴリアットも33秒5をマークしていたのだ。ちなみに今年のカランダガンは33秒2。両馬の実力を比較すれば、そこまで度肝を抜かれる数字ではなかったともいえる。

ただでさえ、グラファールは2頭の調教師だ。ゴリアットを物差しにすれば、カランダガンの充実度合いを考えた場合、「十分に勝負になる」計算は成立したかもしれない。

外国馬にノーチャンスと決めつけていた当方だけに、そんな情報を知っていたとしても今年の作戦に変化はなかった。これはもう仕方がない。最初からマスカレードボールが日本馬に負けることはないという前提で予想をしていたのだから。

しかし、あの夜、グリーンチャンネルで馬体診断的な番組を再放送していたため、辛くなるのを承知で見ていたのだが、カランダガンの馬体は惚れ惚れするものだった。

解説していた調教師さんもひとつひとつのパーツがしっかりしていると褒めていたのだが、私の感想は「日本馬といわれても分からないなこれ」というもの。ダノンデサイルが楽勝したドバイシーマクラシック(G1)はリアルタイムで観戦していたが、このときはデサイルに負けた馬くらいの印象しか残ってなかった。

だが、こうして中立の目で馬を見れば、450キロ台の馬が欧州の馬場で61キロを背負って、あのキングジョージを勝った事実を評価すべきだったのかなとも思う。だって、シーマクラシック以降のレースなんか見てもいなかったんだよ。

むしろ、あの後にコロネーションC2着を挟んでG1を3連勝した訳だから、タマモクロスやハーツクライの覚醒みたいなものであり、ひと夏を超えて別次元の馬にパワーアップしていたと考えた方が折り合いがつく。なるほどねえ。

こうした見落としに僅かな反省をしつつも、「凱旋門賞なんていっそのこと、ばんえいの馬でも連れて行った方が好走したりしてね」と冗談を言っていたような人間だから、そんな発想なんか最初からなかったに等しいと認めざるを得ないわね。

しかし、JRA国際部長が「勝った瞬間は泣きそうになりましたね。陣営の方たち以上に喜んでしまいました」と振り返った一方、「JRA全体が外国馬の優勝を願っていたわけではない」ことも確かだ。

組織としてのJRAは、何といっても売上げ最優先。組織ぐるみで外国馬を勝たせようとしているなら、土日の東京競馬で嫌がらせのような高速馬場を用意したりはしない。

既に土曜の段階で1勝クラスの馬が、今年のダービーより速い2分23秒5で勝利していたり、ヴィレムが勝った日曜のウェルカムSでも天皇賞・秋より速い1分57秒6の決着。馬場造園課は相変わらず空気を読まない(笑)。

ガス抜きの意味でクッション値なんかも公表しているが、当日の数字は「9.3」。JRAちゃんからすれば、あれでも「標準」らしいぞ。

いずれにしても、カランダガンの勝利は来年以降の海外勢にとって、超速馬場攻略のヒントとなったことは間違いない。

1着賞金が4億円(22年)、5億円(23年)と増額され、来年の26年には指定レースの条件を満たせば、賞金5億円+褒賞金500万ドル(約7億7000万円)。これはサウジC(G1)の約15億円超に次ぐ世界2位の高額となる。

私のような古い考えと固定観念に縛られた人間は、まんまとJRAの手のひらの上で転がされた訳だが、このタイミングで外国馬のカランダガンが優勝した意味は非常に大きい。

どうしても避けられない凱旋門賞との比較

では、次にJRAのジャパンCと凱旋門賞の話に移る。

1981年に「世界に通用する強い馬づくり」を目標に創設されたジャパンC。当初は苦戦を強いられたものの、第4回の1984年に日本馬のカツラギエースが初優勝。翌年も皇帝シンボリルドルフが優勝して日本馬の躍進に貢献した。

グレード制導入以降の歴史

フランス調教馬の優勝は、1987年ルグロリュー以来の38年ぶりだったようだが、今こうしてみると410キロと小さな馬だった。3歳馬があえて極東のG1に使われて勝ったのはなかなか。

それはともかくとして、外国馬が馬券に絡んだのはディープインパクトが優勝した2006年の3着馬ウィジャボードが最後。金になったという意味でも19年ぶりだった。

いやいや、そんな話はもうとっくにやっている。ジャパンCと凱旋門賞の話をするって言ったじゃないか。

少し話を蒸し返すことになるが、史上初3歳馬による天皇賞&ジャパンC優勝というマスカレードボールの快挙を阻止した影のMVPが主催者のJRAだったことだ。※2着に敗れたけども、これも史上初。

これに対し、フランス競馬はギャロ(France Galop)が主催者。もちろん凱旋門賞もギャロの管理下で開催されるのだが、ジャパンCの存在意義が危ぶまれていたJRAとは異なり、向こうは別に「そろそろ日本馬に勝ってもらわないと困る事情」は一切ない。むしろ「勝たせたくない」くらいに考えていてもおかしくない。

わざわざ日本馬の参戦をお願いしなくても、普通に欧州のトップクラスが目標としているレースだからだ。カランダガン陣営にしても騙馬に出走資格がなかっただけであり、出られるのであればジャパンCより凱旋門賞に出たかったはずだ。

そう考えると、JRAが外国馬の陣営に色々と便宜を図ってくれても、凱旋門賞に挑戦する日本馬にギャロのサポートは期待できない。JRA国際部のように「オタクの馬なら勝てまっせ」と裏で手招きしてくれることもない。

だが、カランダガンの偉業に驚かされただけで終わらせるのは勿体ない。

「どうして勝たれたのか」「なぜ勝てたのか」

これをもう一度考えるきっかけにもなったのではないか。

個人的な感情を抜きにして振り返れば、高速馬場の適性に疑問があっただけで、カランダガンの実力そのものを疑っていたわけではないこと。ここにヒントがあるように感じた。

だからといって、すぐにこれをああしろとかあれをこうしろとかいうこともない。

シンプルに「最強クラスの馬」が出走すれば、勝つ可能性がゼロではないこと。これに尽きると思う。

ここ数年の凱旋門賞に出走した日本馬の顔触れは、確かにチャンスがない訳ではなかったかもしれないけれど、「本気で勝つ気があったのか」と問われた場合、自信を持ってYESと答えることができただろうか?

欧州の馬場適性は取り沙汰されても、日本馬が勝ち負けした年の出走馬を思い出してほしい。

凡走した馬たちにG1勝ち実績があったとしても、かつてのエルコンドルパサー、ディープインパクト、オルフェーヴル級の現役最強馬だったのかと聞かれたら答えは否。結果論を含めての話だが、本気で勝ちたいなら「史上最強クラスの馬を連れていかなければチャンスがない」という当たり前の話に戻る。

東京専用機といえそうなアーモンドアイはともかく、イクイノックスならジャパンCを勝たれるより先に凱旋門賞を勝てた可能性がある。

これは2023年の凱旋門賞だが、失礼を承知で言うとスルーセブンシーズでさえ4着に善戦していたのだ。勝ちタイム2分25秒5も日本馬が苦にしない時計。ここにイクイノックスが出ていたなら、おそらく勝ち負けまで持ち込めただろう。でも出さなかった。これが事実だ。

読者諸兄も「当たり前の話をしている」「そんなの誰でも思ったよ」となるはず。

日仏の関係者も認めているように「ホーム側で最強クラスの馬が出走していないこと」「挑戦する側が最強クラスの馬を出走させること」が勝利への最短距離。我々日本のファンがジャパンCの外国馬に「本気で勝ちに来ている馬がいない」とタカをくくっていたように、フランスのファンも凱旋門賞で「本気で勝ちに来ている馬がいない」と感じていても仕方ない。

パリロンシャンで「雨が降ったら別競技」という話は現実的だが、条件さえ噛み合えば勝てない相手やコースでもないはず。

やることをやったカランダガンに、20年ぶりの勝利をさらわれた事実をただの偶然で片付ける必要もないし、日本の競馬関係者もモチベーションアップに繋がればいいだけのこと。超速馬場の弊害は公正競馬を脅かすレベルまで深刻化しているとはいえ、それでも上がり最速でレコードを更新されては、ぐうの音も出ない。

以前記事で触れたことがあるのだが、安易に挑戦して下手な鉄砲も数撃ちゃ当たるのような参戦よりも、その時の最強馬が1頭いればいいだけのような気もする。当たり前のことを再認識させられた。そんな今年のジャパンCだった。

 

 

それでもね、俺の大好きなマスカレードボールが出る年に、なんちゅういらんことをしてくれたんやとも思うわけ。あの敗戦にしてもスッキリせんとこあったし、うんこ造園課も味方だと思ってたよ。まさか国際部が裏で動いとったとはなあ。おかげでこっちは1500万のWIN5を取り損ねたぞ。もう許さないからな(笑)