第83回東京優駿(G1)はマカヒキがハイレベルの接戦を制してV。川田は晴れてダービージョッキーに。

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2016第83回東京優駿/日本ダービー(G1)の結果分析

青葉賞同様、大知のマイネルハニーが先手を主張してハナ。

これに浜中プロフェット、松山アグネスフォルテが続き隊列はすんなり落ち着いた。

注目の1番人気ディーマジェスティはゲートの出がいまひとつで中団やや後方の内、マカヒキは好スタートから下げずに中団前目の絶好位に取り付けた。

サトノダイヤモンドはちょうどマカヒキの外を追走する形でエアスピネルはいつもの先行策で5番手。

目を疑ったのはミルコのリオンディーズがほぼ最後方近くの15番手を走っていたことである。

前半3F35.6はオークスよりも遅く、出入りの激しかった皐月賞とは対極に1000m通過は60.0のフラット。

この段階でスローは確定しており、後方に位置取った騎手は既に圏外同然となった。

緩いペースが続いたことで直線では前々で脚を溜めた馬の切れ味勝負。

スローを見越した武豊が早めにムチを入れて一度は直線で先頭に立つ見せ場を作ったが、ほぼ直後を追走していたマカヒキが狭いところを何とかすり抜け、前を行くサトノに追いついたところがゴール。

ディーマジェスティは勝負どころで外の進路を選択したことが仇となり、ヨレたサトノから二度に渡る不利を受けた結果、1/2及ばず3着惜敗。

馬をまっすぐ走らせることに定評がある武の後ろにいた川田とルメールの後ろにいた蛯名も明暗。

上位4頭はそれぞれ力のぶつかり合いで非常に見ごたえのあるレースとなった。

ミルコの判断ミスによって超ハイペース決着となった皐月賞。

対して過去の傾向的にペースが落ち着きやすいダービーで皐月賞の結果を鵜呑みに出来ない可能性は危惧されたものの、終わってみれば皐月賞の1,2,3着馬がダービーでも同じく1,2,3着と再現し、他馬との差は顕著だった。

オークスについては勝ったシンハライトの力が断然に抜けていたため、池添のミスもちょうどいいハンデとなったが、さすがにダービーでは騎手の判断が大きく結果に影響した。

勝ちたい気持ちが強ければ強いほど何とかなるというものではなく、リスクを犯す度胸も要求された結果となった。

そう考えると、1番人気で勝ちたいと平然と応える武豊の達観ぶりは改めて凄みを感じさせられる。

★ポイント

マカヒキの皐月賞の敗因が川田だとすれば、ダービーの勝因も川田。

これは敗れた蛯名にとっても同じことが言えそうだ。

どちらも半端に敗れたルメールはまさにルメールのキャラクターそのものかもしれない。

落鉄云々よりルメールを乗せていること自体が敗因となってしまった感。

レースとしては最も完璧に乗ったのはやはり武豊であった。

乗り方は申し分なかったが、残念ながら馬の力が足りていなかった。

そしてミルコのまさかの大失態。

■8cmのハナ差以上に差があったのは馬の能力ではない

※右下の蛯名の背中が切ないが、リスクを犯せなかった自己責任。

2016dbg

※マカヒキはルメールが乗っていた馬だったが、ルメールは継続して騎乗する選択肢を放棄してサトノダイヤモンドを選んだ。

■川田はクラシック全制覇を達成

★桜花賞  ハープスター

★オークス ジェンティルドンナ

★皐月賞  キャプテントゥーレ

★ダービー マカヒキ

★菊花賞  ビッグウィーク

※1番人気での勝利はハープスターの桜花賞のみ。

川田のこれまでのキャラクターとしては人気馬に騎乗して飛ばす側のポジションだった。

2016第83回東京優駿(G1)の結果
1着マカヒキ川田 将雅2.24.0 33.308-08友道 康夫3
2着サトノダイヤモンドC.ルメール2.24.0ハナ33.406-07池江 泰寿2
3着ディーマジェスティ蛯名 正義2.24.11/233.308-10二ノ宮敬宇1
4着エアスピネル武豊2.24.434.005-05笹田 和秀7
5着リオンディーズM.デムーロ2.24.51/233.216-17角居 勝彦4

※オークスより1秒ほど速いが、上がり33秒台が多数いるようにスローの瞬発力勝負となった。

それだけにいかに前々でロスなく直線で進路を見つけられたかが勝負の分かれ目。

■ラップ構成

200m400m600m800m1000m
12.623.735.647.760.0
12.611.111.912.112.3
1200m1400m1600m1800m2000m
1.12.91.26.01.37.81.49.82.01.4
12.913.111.812.011.6
2200m2400m   
2.12.42.24.0   
11.011.6   
4F 46.2 – 3F 34.2

※G1で絶好の馬場状態を考えると前半1000mを60.0はスロー。

上がり勝負を決定付けたのが1000m過ぎからの12.9-13.1。

皐月賞はここからさらに加速が続いたが真逆の展開。

■2016第83回東京優駿(G1)レース映像

■各馬のコメント

1着マカヒキ

全姉がスプリントからマイルまでのウリウリでもあり、距離延長は懸念材料だったが杞憂に終わった。

オーナーの性格と近年の競馬界の傾向から菊よりは秋の天皇賞や凱旋門賞などの選択肢が有力。

今回の勝利は何と言っても川田の好騎乗に尽きる。

裏事情としては友道師から前に行けるよねと指示があったのは手放しで褒められないとはいえ結果オーライ。

皐月賞では無難にほぼ最後方から大外をぶん回すというロスの多い競馬が敗因。

とはいえゴール前でのディーマジェスティの伸び脚は抜けており、普通に乗っても勝てたかとなると怪しかった。

そして、ディープ産駒が苦手なよどみなく流れるタフな展開とならなかったことも奏功。

中団前内目のスローと絶好のポジションで上がりだけの勝負ならこの馬の切れが最も生きる展開でもある。

ただ、これはいつもの川田のように最後方から外を回そうとしていたらミルコのリオンディーズと同じ結末だった。

トゥザワールドやハープスターで散々恥を晒して来たがゆえの学習であり進歩と受け取りたい。

これからは人気馬で安定して結果を出せられるかが次なる成長アピールとなる。

今の中山は外が伸びて東京は前が残るのを把握して上での発言だったのは評価したい。

2着サトノダイヤモンド

おそらくは最もG1に近かった馬ではないか。

ただ、この馬の不運は池江厩舎に預託されたことと、ルメールが主戦だったことだろう。

強力な強みもなければ強力な弱点もないオールマイティで平均点が高いタイプ。

いささか没個性的ではあるが、初心者向けというか乗りやすい馬。

ゲートもスムーズで好位も取れるスピードがあり、切れる脚も持っている。

敗れても勿体無かったと思えるだけの能力が垣間見える。

これが早熟型の天才なのか、はたまたビワハヤヒデのような覚醒型になるのか。

後者のタイプなら末恐ろしい。

3着ディーマジェスティ

思い起こせばステージチャンプでの早とちりガッツポーズにバブルガムフェローでの初G1制覇と長く見てきた騎手。

だが、こちらの競馬歴が長くなるのだから蛯名もベテランと言われる年齢に。

となるとダービーを勝てていない、勝ちたいというのは当然の欲求。

1番枠から悪くないスタートだったが、蛯名は無難に押さえる選択をしたのに対し、川田は明確な意思を持って蛯名の前を取りに行った。

これは皐月賞で敗れて無敗のプレッシャーから解放された川田と逆に1番人気でダービーに臨むことになった蛯名の精神面の違いが如実に現れたもの。

タラレバを言い出すとキリがないが、もしも蛯名が下げずにそのままの位置で競馬をして川田が外を回していたら結果は変わっていただろう。

でもこれが競馬であるから仕方がない。

それに蛯名は普段から岩田のラフプレイなどに苦言を呈している側の人間だから自分が抉じ開けるような騎乗はしないであろうこともポリシー。

4着エアスピネル

確勝と思われたNHKマイルを使わずにあえてダービーに挑戦した陣営の心意気はリスペクトすべきか。

外野からすればただでG1馬の称号が手に入るチャンスならロードクエストのような選択もありだったが。

皐月賞ではミルコに振り回されてハイペースを付き合わされたが、今回は内目の前という最高のポジション。

スローになるのを見越した上で早めに仕掛けるクレバーさを見せた。

上がりも34.0と極限まで我慢して仕掛けたことが垣間見える好騎乗である。

サトノダイヤモンドの下位互換的な成績だが、サトノに武が騎乗していればサトノがダービー馬だっただろう。

イスラボニータくらいの能力はありそうで、王道路線ではライバルが強力だがマイルなら一線級。

血統的に距離延長も問題はないが、今後どういった路線に行くのか興味深い。

あえてのダービー参戦だけに菊花賞も十分ありえるか。

5着リオンディーズ

蛯名のミスは許容範囲で死力を尽くした上位4頭に比べて、ただ1頭致命的な騎乗ミスで不完全燃焼に終わったのがこの馬。

皐月賞ではハイペースで自爆してダービーではスローなので下げましたとさすがに擁護の仕様がないミス。

下手するとジャパンカップのウオッカと武の件のように角居とミルコの決別もありえるかもしれない。

皐月賞では自分が出していったのを掛かったと弁明して、ダービーでは手綱を引っ張ってほぼ最後方まで下げたにもかかわらず掛かったと言ってしまった。

先天的に折り合い難の血統で皐月賞でハイペースを出していったのに今度はスローのダービーでは引っ張って下げてしまってはレースの展開と正反対のことをしている。

潜在能力はトップクラスの馬だけにペナルティとして思い切った乗り替りも検討の余地があるのではないか。

ミルコは好きな騎手だがさすがにこれでは馬が可哀想だ。

そもそも武への嫌がらせに朝日杯なんか使ったとこからケチのつき始め。

6着スマートオーディン

スローの外差し専門の馬。

マカヒキが取ったようなイン突きの技術は戸崎にはないし、作戦の選択肢にも入っていない。

この馬はこういう競馬しか出来ないだけだが能力は十分発揮してのもの。

これはただ単に現状の力関係だろう。

7着マウントロブソン

勿体無いの一言。

出遅れたのが致命的なビハインド。

どちらかといえば珍しい切れないディープ産駒でラストインパクトのようなタイプ。

エアスピネルと同じような位置で競馬が出来ていれば面白かった。

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